この時代を扱った歴史劇には何となく苦手意識があった。本作が数多くの賞に輝きスクリーンで見るチャンスは何度もあり、師から長期間、DVDを貸してもらっていたにもかかわらず未見のままだった。『カリギュラ』なんか若い頃、オンタイムで観ているんですけどね。あっ、今気がついた。逆にそれがいけなかったかも知れないって。
これは考証を楽しむ作品ではなく、その辺りはむしろ仕掛けを楽しむ作品ですね。ローマのコロッセオでの剣闘試合を見ながらようやくわかってくる。そこが自分の中で落ちると圧倒的な没入感に変わり最後まで一気に見せられました。
ラッセル・クロウが最高にいいですよね。地のご性格は別として結構好きな役者で折に触れて見てきたつもりだけどこの作品が一番良かった。四半世紀前の作品でこの頃が肉体的にも最も引き締まった時期だったのではないでしょうか?彼の表情ひとつにある時は感情を鼓舞され、ある時は涙させられました。
わかりやすいストーリーもまた秀逸ですね。皇帝から全服の信頼を得た将軍から一転して奴隷、奴隷から剣闘士へと目の離せない展開。もう一方で皇帝から息子としての愛情をかけられず、他者に皇位を奪われかねない不安、凡庸な才能への悩み、かなわぬ姉への思慕、民衆の移り気に翻弄される皇帝のたどる運命。感情移するキャラクターによっても見方の変わる作りとなっていて何回も見たくなる作りになっています。
いずれにしても時代を超えた教訓は、「大衆を味方につけろ」でしょう。この名セリフを発したプロキシモ。演じたオリバー・リードは本作が遺作となりました。名優の死が悼まれます。