J・G・バラードのSFというか変態小説に同名のものがあって、なぜか本作はこれが原作だとずっと勘違いしていて、どうも鑑賞を避けてきていた。なんてもったいない。
BLM運動に直結するテーマだが、そのメッセージは人間の性というか業というか、根本的な問題を提起してくる。
かように差別や憎悪というものは白人であろうと有色人種であろうとマジョリティであろうとマイノリティであろうと人間のどこかしらに必ず埋め込まれている宿痾であるということだ。
政治や社会システムでは解決できない、しかし必ず解決できるものとして希望の火を僅かにともして映画は終わる。登場人物それぞれがあくまでもパーソナルな体験、思考、感情でどうにか乗り越えていく。
シンプルだが一人一人が変わっていかなければいけないとするメッセージは本質をついていて感動的だ。
序盤ではサンドラ・ブロックがマイケルジャクソン化する前の顔だったり新旧ウォー・マシンが二人とも揃ってるぞということだったり、勝手にノイズを付け足していたが、申し訳ない。
人間ドラマ、恋愛もの、はては昨今のヒーローものにすら埋め込まれる反差別メッセージが、この映画ではその社会性の皮をかぶって、人間の本質を突いてくる。珠玉のアイデアである。
ポール・ハギス恐るべし。