2017年の「キングコング：髑髏島の巨神」であります。1976年と2005年の作品は「リメイク」でしたが、今回は「リブート」ださうです。忠臣蔵ぢやないのだから、そろそろ新展開があつても良いでせう。
そしてもう一つの特徴は、「モンスター・ヴァース」の一作として製作された事であります。「モンスター・ヴァース」とは、wikiの説明によると「レジェンダリー・エンターテインメントが製作し、ワーナー・ブラザース・ピクチャーズが共同で製作・配給する、ゴジラとキングコングを主人公とした一連の怪獣映画を中心としたアメリカ合衆国のメディア・フランチャイズであり、シェアード・ユニバースである」。なある、それで続々とシリーズ化されてゐるのですな。
時代背景は1973年としてゐます。まだ太平洋戦争の生き残り兵が元気で、アメリカがベトナム戦争からの撤退を決断した年でもあり、物語にもその影響が生々しいのです。アメリカの権威を失墜させたベトナム戦争。彼らはあの戦争から何を学び、学ばなかつたか、などと云ふ抹香臭い話ではございません。
今回「髑髏島」への調査を働きかけたのは、特務研究機関モナークに属するランダ（ジョン・グッドマン）なる学者。地質調査と偽り、実は島に棲息するといふ巨神の調査をしたいのでした。同行するのは学者のヒューストン・ブルックス（コーリー・ホーキンズ）・サン・リン（ジン・ティエン）と、案内役兼サバイバル指導のジェームズ・コンラッド（トム・ヒドルストン）、戦場カメラマン（自称「反戦カメラマン」）のメイソン・ウィーバー（ブリー・ラーソン）、護衛の為について行くプレストン・パッカード大佐（サミュエル・L・ジャクソン）以下の部隊。ベトナム戦線から戻つたばかりのパッカードにしては、楽ちんな任務に思はれましたが、実は想像を絶する地獄図絵が待つてゐました。
身勝手な人間が未開世界の秩序を乱したばかりに、未曽有の悲劇を招く展開は過去作と同じですが、コングの役割が美女を守る事から島全体を守る事へとシフトされてをります。だからイキナリ爆撃されたら怒るし、人間側に鉄槌が下されるのも当然と申せませう。
それに気付いた主人公たちが、島のバケモノたち（島に住み着いたハンク・マーロウ中尉（ジョン・C・ライリー）が探検隊をビビらせる為に、即席で「スカル・クローラー」と命名）の天敵であるコングを守る展開になり、一方で部下をコングたちに殺されたパッカードが理性を失ひ、復讐に燃えヤツを殺すまで帰らないなどと対立します。それは全く無駄な抵抗でした。人間にとつて残された「勝利」は、島から無事に帰還する事だけだつたのであります。
コングへのリスペクトが感じられる設定やストオリイは中中良いし、スカル・クローラーとの対決も迫力があつて、怪獣映画の醍醐味を味ははせてくれます。アニメに親しんだ世代としては、最後にコングが死ぬよりも、胸板をドンドン叩いて雄たけびを上げる姿で終る方が馴染みやすいのです。ただ、現在のVFXは最早表現不可能な映像は無いので、却つて驚きは感じられないのは詮無い事であります。あと、都心で暴れる姿も見たい喃。我儘はキリがない。
エンドロールの後にも映画は続き、モンスターヴァースの次回作を思はせて終り。期待を煽りますが、果してその内容は如何なるものでせうか？