ピンクともパープルとも言えない外壁で,3階建の建物に人々は住まいしている.隣の建物にも人々が住んでおり,その2階通路から駐車場に駐車してある車のフロントガラスに向かって唾を吐きかけている.車からの視線に応じ,大掛かりで目立つ意匠を店構えが並ぶ.ここはフロリダで,子どもたちは夏休みを持て余し,その保護者たちも子どもたちに手を焼いているようで,あまり保護も養育も躾もしていない.モーテルを管理するビリー(ウィレム・デフォー)も外壁の塗装から,モーテルの会計,共用部から敷地内の警備までさまざまに建物の世話を焼かなければならない.子どもたちははしゃぎ,騒ぎ,アイスクリームを食べている.ここは観光地で,この界隈にまともな食事は感じられず,人々の相互の貸し借りの関係の中で,飲食業にたずさわる者たちから回されているようにも感じる.ファストフードのほか,土産物やファンシーグッズが売られれている店が並ぶ.ヘリが飛び,車が乗りつけられ,人々は踊っている.
子どもたちは空き家を放火する.そこはフロリダらしく雨が降り出す.地平線近くに夕日が沈み,ビリーがとりあえずタバコを吸い出すと,モーテルの照明が薄暗さに反応し,自動で点灯する.火事が起こると,野次馬として人々は集まり,その火事を評し,感慨に浸っているようでもある.
母らしきヘイリー(ブリア・ヴィネイト)と子らしきムーニー(ブルックリン・キンバリー・プリンス)はそこに住み着いている.生計も関係も不安定であり,助け合いや友だちもいつまでも続くわけではない.ワールドへ入場するためのマジックバンドは盗まれ,売られ,その金が母子のその日暮らしを成り立たせている.キャメラは,そうした生活の断片を捉え,諍いを捉え,彼女らのジャンプやダンスの運動を追いかけようとしている.騒がしい音楽のほかにも,物が割られ,投げつけられ,ヘリがプロペラを鳴らし,車に轢かれ,人が人を殴る音などが聞こえてくる.人々の声もそうした衝突,破壊,落下などと地続きにあるように感じられる.子どもたちは,こうした事件の視線で人々の間に立ち入りながら見つめているように思える.