華氏 119

かしいちいちきゅう|FAHRENHEIT 11/9|FAHRENHEIT 11/9

華氏 119

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レビューの数

84

平均評点

74.6(379人)

観たひと

537

観たいひと

58

(C)2018 Midwestern Films LLC 2018 (C)Paul Morigi / gettyimages

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドキュメンタリー / 社会派
製作国 アメリカ
製作年 2018
公開年月日 2018/11/2
上映時間 128分
製作会社
配給 ギャガ
レイティング 一般映画
カラー カラー
アスペクト比
上映フォーマット デジタル
メディアタイプ ビデオ 他
音声 5.1ch

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

アポなし突撃取材でアメリカ社会に一石を投じ続けるマイケル・ムーアがトランプ大統領に切り込んだドキュメンタリー。大統領選のさなかにトランプ当選の予測を的中させたムーアがトランプの驚愕の事実を明らかにし、この暗黒時代をどう抜け出すかを披露する。第43回トロント国際映画祭ドキュメンタリー部門オープニング作品、第31回東京国際映画祭正式出品作品。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

大統領選さなかの2016年7月、マイケル・ムーアは『大統領選でトランプが勝利する5つの理由』というエッセイを書き、変人扱いを受けながらもその予測を的中させた。彼がトランプ大統領を取材するうちに、「トランプは‘悪の天才’。感心するほどの狡猾さでトランプを笑っている私たちでさえ彼の術中にはめられている」という驚愕の事実が分かってきた。どんなスキャンダルが起こっても大統領の座から降りなくて済むように、アメリカの国民はもちろん、ジャーナリストやメディア、憲法や司法システム、さらには他国の政治や国民すら利用して仕組んでいるというのだ。ムーアはすべてに歯止めをかけようと、本作でトランプ・ファミリーが崩壊必至のネタを大暴露し、トランプを当選させたアメリカ社会に鋭く切り込みを入れ、この暗黒時代をどう抜け出すかを示す。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2018年12月下旬号

読者の映画評:「止められるか、俺たちを」吉田伴内/「華氏119」原田隆司/「アマンダ」田中敏巳

2018年11月下旬号

「華氏119」:インタビュー マイケル・ムーア[監督]

「華氏119」:解説

2024/05/15

2024/05/20

68点

レンタル/千葉県 


民主主義の記録

本作は同監督の集大成的な構成だ。
銃乱射に起因する反銃運動、2016年の大統領選でのヒラリーのまさかの敗北とトランプの勝利が実は民主党(オバマ政権)の欺瞞や大衆無視の政治姿勢に由来していることを自らの地元ミネソタ州フリントの水道水汚染問題とGM優遇といった事実から明らかにしている。
トランプの余りにも場当たりな当選がマスコミやSNSの浸透によって巨大ないびつなモンスターを生み出したことの喜劇と恐怖を予感させる。
ただゲリラ的な取材は悪くないのだが、やや編集が雑な印象で折角の多くの情報量が効果的なのかは疑問に思う。
それでも民主党の新しい勢力や若い学生らの活動にアメリカの将来を期待している点は理解できる。
同監督の民主主義を記録することがその進展に寄与することの意味を評価したい。

2023/12/16

2023/12/31

80点

VOD/U-NEXT 
字幕


アメリカの実態を描く。

トランプが大統領になるまでを描いたドキュメンタリー。トランプが大統領候補に立候補する前にミシガン州知事のスナイダーが悪事の見本となっていた。元々州民の水道水をヒューロン湖から引いており自らの利益のために不要なパイプ建設を進めたが、その過程で水道水をフリント川に変更する必要があった。しかしそのフリント川の水質はひどく鉛が含まれているレベルであった。信じがたい事に州民はその水を飲まされ続け、血液検査結果は隠蔽される始末。この問題の発覚後GM社は部品が錆びるために水がヒューロン湖へ戻されたが、州民への水は供給され続けた。先進国アメリカでこのような事が起こるのかと心底驚いた。
アメリカの大統領選は選挙人制度が採用されている。得票数では民主が多いが選挙人制度で共和党が勝利する傾向が見られる。結局リベラル寄りの思想では選挙に勝てず民主もビルクリントンの時に共和寄りの政策へシフトした。本作の中ではその結果として、犯罪法が成立し黒人投獄が増え、金融の規制緩和が進み、雇用がメキシコに流れ、同性同士結婚が非合法化、貧困層への支援停止、などが進められたことを説明している。また権力ある新聞社への影響も大きくなり報道の偏りが拡大した。
民主党大会ではウエストバージニア州でバーニーサンダース候補は優勢だったにも関わらず特別代議員の表を上乗せする事で党幹部の意向が反映され、結局民意は無視されヒラリーが民主党候補となった。
トランプとヒラリーの大統領選はヒラリーが高確率で勝利することが予想されていたが、蓋を開けてみるとトランプが勝利。その結果アメリカ内向きの政策が強くなり、中国との対立が先鋭化、パリ協定からの離脱、医療保険制度改革であるオバマケアの無効化申し立てなど、果たしてアメリカや世界にとって本当に良い方向性なのかどうかは疑わしい。しかしアメリカ国民が少なからず望んだ結果であるのだろう。
本作ではマイケルムーアならではの普段見れないアメリカが見れたようで、とても刺激的な作品であった。

2023/11/12

2023/11/12

75点

VOD/U-NEXT 

・ムーア監督の切り取る草の根の真実、日本で生活する自分には知らないことばかり、映画として作成されたから自分にも届いた、世界には知らなければならないことがまだまだある
・作中で描かれる社会問題、ミシガン州フリントの水道からの鉛中毒問題と利用する共和党州知事に対する市民の活動、教師が声を上げたスマートウォッチで管理されることと引き換えの皆保険制度に対するストライキ、銃乱射事件を発端とした未成年の学生による銃規制活動 どれも市民の行動が形になっている 市民活動の重要性が痛いほど伝わる
・一方で、市民派である民主党の失墜にも光が当たる ヒラリーが民主党候補になった代表選でのサンダース候補への不正行為、鉛中毒問題に対するオバマ大統領の信頼を貶める言動 国に期待できなくなるこのようなことがトランプを生んだことになることも理解できる
・トランプ大統領のあまりに差別的で、利己的で、品位にかける行動言動に熱狂する恐ろしさ 後半に対しされるヒトラーになぞらえた表現が的確である 危険な時代にどれほどの人が気付けるのか、この問題はアメリカだけなのか、冷静にならなければならない
・アメリカの大統領選挙 過半数を取っても勝てない選挙人制度、銃規制や中絶、皆保険などに賛成するアンケートがある中で逆に振れる制度には疑問と恐ろしさを感じる
・ムーア監督を含めた市民派(人権派)は一定数必要である このような作品が定期的に社会に出て、バランスを取るべきである
 

2023/01/16

2023/02/03

80点

レンタル 
字幕


目からウロコ

ネタバレ

マチズモで人種差別主義者であることを隠そうともしない政治経験のないナルシストの実業家がなぜ大統領になれたのか。トランプ大統領誕生に至る経緯と民主主義の危機を描いたこの映画を観て思い出す。結局は「民主主義の国において、国民はその程度に応じた政府しかもちえない」という言葉を。そして、米国の属国たる日本は大丈夫か?と自問し、いやダメだろう、と自答する。なぜならトランプの類友が憲政史上最長の首相だったのだから。さらには、米国同様に選挙の投票率が低い日本だからこそ胸を衝く。「民主主義の主役は民だ。民が黙れば民主主義の意思は消える」という劇中のフレーズが。

ニュース映像や名作映画をふんだんに盛り込みながら要所にブラックユーモアを交えることで、ともすれば生硬になりがちなテーマを柔らかくほぐし、アップテンポなシークエンス展開で観る者を引き込む語り口はM・ムーアならでは。全米各地で起こる乱射事件はまさに政治問題であることをはじめ、教師を中心にした組合主導のストライキや革命を肯定するティーンエイジャーの大規模デモなど、知らないことがいっぱいで、自分にとってまさに目からウロコの啓蒙ドキュメンタリーだった。

それにしても、飲み水に鉛が混入したフリント市の水質汚染問題はあまりにも酷すぎる。一見ヒロイックなリーダーが吐く安易な希望にすがることの危うさとともに、拝金主義に侵された独裁政治がどんなに恐ろしいかをまざまざと見せつけられた。

2021/08/20

2021/08/21

80点

選択しない 
字幕


サンダースは

民主党内で実はバイデンに勝っていたのか?!「何度も民主党が政権をとっても状況が変わらないのは、その意図も能力も無いからだ」という批判が痛烈で、本当にそうなのかもしれない、と思える。日本の民主党も、会社に対しての御用組合のような役割なのか?

2021/06/06

2021/06/11

70点

テレビ/有料放送/WOWOW 
字幕


トランプを切り口にアメリカ社会と政治の混迷をあぶり出すドキュメンタリー

ネタバレ

アメリカ中間選挙を控えた2018年に公開された「アポなし突撃ドキュメンタリー監督」として有名なマイケル・ムーアのドキュメンタリー映画。トランプがアメリカ大統領になったからくりを暴き出す!みたいなコピーや紹介が踊っているので、2016年の大統領選挙時にトランプが行った暴挙をつまびらかにする暴露系ドキュメンタリー映画と思ったらちょっと違いました。
問題はトランプじゃないんですね。いや、トランプも大問題な男ですけど。
冒頭から序盤にかけては2016年の大統領選挙選で勝利を確信して浮かれまくってた民主党サイドや、実際にはトランプが当選しちゃって一転してしまう様子、トランプが出馬するきっかけになったらしいくだらない理由、マイケル・ムーアとのテレビ共演、愛娘イヴァンカへのやや異常な溺愛のしかたなど、マイケル・ムーアらしい皮肉と嫌味たっぷりに映し出されます。
ニュースなどの映像を素材を切り貼りし、そこにテロップや音楽をのせてシニカルに編集するセンスは流石ですね。
ただ僕もトランプはあまり好きではない、はっきり言っちゃうと嫌いなんですけど、全編こんな調子でトランプをこき下ろすような作りだったらちょっと辟易しちゃうなぁとは思ってました。ヒトラーとの比較は面白かったですけどね。流石に飛躍ししすぎじゃないかと思ったけど、ヒトラーの演説の様子や音声を聞いてると確かにちょっと似てます。別に画期的なことや小難しいことは全く言ってないけど、聴衆の煽り方やその場をコントロールする話術に長けているところが。
しかし本作の中心として描かれるのはそういったトランプ個人のことではありません。
トランプの富豪仲間スナイダーが知事となったミシガン州で行う謀略。
そのスナイダーが自らの利益のみを追求するために鉛で汚染された水道に苦しむフリントの街。
既得権益のために大衆からの人気のあるサンダースを捨ててヒラリーを選んだ民主党。
人種差別、ヘイトクライムがより顕在化していく社会。
国民投票をしながらも未だに選挙人制度が続く大統領選挙。
遠山の金さんよろしくスナイダーをギャフンと言わせようと集会に招致したらまさかの見て見ぬふりをするオバマ大統領。
そこには政治や権力の腐敗がまざまざと見てとれます。そしてそのために多くの人の健康や生活、安全が犠牲となっているのかも。特にオバマ大統領のフリントでの水道水へのパフォーマンスは衝撃的でした。まるで遠山の金さんが悪代官に対して桜の彫り物を見せるどころか「問題なし!」と言い放ってるみたいなものじゃないですか。
これでは政治に対しても選挙に対しても失望してしまうのは仕方ないでしょう。失望の先には諦め、無関心が待っています。どうせ何をしたところで変わらない、結局は自分たちの意思表示や意向は無視されてしまうのだからと。
こういった状況、環境がトランプのような男を大統領にしてしまう土壌をジワジワと醸成していったのでしょう。大衆にとっては悲劇ですが、トランプにとってみればこれ以上ない好機だったのかも。
こうしてみると政治への諦めという点では日本もアメリカも似たような問題を抱えているんですねぇ。
でもそこで誰もやらないなら自分がやる!と自ら下院議員になって声を上げる人たちが現れてきたり、低賃金にあえぐ教師たちがストを起こして全米に広がっていったり、銃乱射事件によって高校生が自分たちの力で銃規制を訴える運動を展開したりと、一般人が行動を起こしてムーブメントを作ったりするところはやっぱりアメリカだなぁと。
日本ではなかなか声を上げる人がいてもそれが全国へ波及していくというのはなかなか無いものなぁ。
なかなか日本では報道されないようなことや一般人目線でのアメリカの抱える闇を色々とりあげられていて非常に興味深い作品ではありました。
トランプ個人もそりゃヤバいんだけど、それ以上にアメリカが今どうにかしないといけない混沌にいるんだということをこのドキュメンタリーから感じることができます。その象徴、メタファーがトランプという存在なのかもしれません。
昨年の大統領選でトランプは破れ、バイデン政権が誕生したもののとても問題が好転しているとは思えず。未だコロナ禍は終息せず、ロシアによるウクライナ侵攻が始まり、アメリカはおろか世界情勢はすっかり変わってしまいました。
そんな中、来月にもトランプが再び大統領選に出馬するという話もでてきてる今日このごろ。
マイケル・ムーアはまだまだ休めませんね。

というわけで最初はマイケル・ムーアの主観、持論によってトランプを茶化したり皮肉ったりするものに見えるけど、実際はトランプを切り口としてアメリカが抱えている問題を描き出すための「つかみ」となっている構成には感心しました。トランプ個人をただこき下ろすだけのものであれば面白くはあってもただそれだけのあまり品のない作品になってたのでは。そうではなくってその元にあるもっと広い視点や問題提起、そしてその先は観る者に託されていることを示すものになっていく展開に知らず知らず見入ってしまいました。軽く考えてたけど予想外に真面目でしっかりした分析をした作品だったことを評価しまして、個人的評価は100点満点中70点です。