アサド政権、反体制派、さらにISの対立がシリアの首都ダマスカス。
舅と娘・息子とともに、市内の戦闘に参加した夫の帰りを待つ妻オーム(ヒアム・アッバス)。
彼らが暮らすアパートメントの一室には、他に家政婦、乳飲み子を抱えた若い夫婦がいる。
若い夫婦は同じアパートメントの5階で暮らしていたのだが、爆撃を受けて住めなくなってしまったのだ。
その日の朝、若夫婦の夫は、協力者にを得て隣国レバノンの首都ベイルートへの脱出ルートを得た。
連絡のためにアパートメントを出た彼は、建物前の駐車場で狙撃されてしまう。
家政婦はそれを目撃し、女主人のオームに伝えるが、いまは危険だから夜まで待つしかない、とオームは、誰に告げることもせず黙ってやり過ごす決断をする・・・
といったところからはじまる物語で、シリアが置かれている状況などはあまり説明はなされず、彼女たち一家が暮らすアパートメントの一室の中での緊迫した物語が展開します。
ヒアム・アッバスが主演していることもあり、2018年に公開された『ガザの美容室』(製作は2015年)を思い出しますが、戦火の中のせまい一室での一日を描くという意味で、ほぼ同工異曲、ほぼ同じよう。
若干異なるのは、安全を求めて立てこもるアパートメントの一室に、政権側かなにかは不明だが、家族の安全を脅かす男二人組が侵入してきて、若妻を犯してしまうといったところか。
夜になり、撃たれた若夫を救出しに向かうと、果たして若夫は瀕死、まだ生命があった。
どうにかして、オームの夫の仲間に連絡をつけ、助け出してもらうが・・・
と、現実世界のいまそこにある問題を描くことは評価できるのだけれど、映画的には、いまひとつの感じが強いです。
ワンシチュエーションムーヴィといった手法をとったことで、映画的な広がりがなくなってしまったからかもしれませんね。