主演のふたりは〈自然な演技〉と〈素の振る舞い〉を履き違えているんじゃないだろうかと思うような演技。とかく自然な演技を目指して失敗するのは、素に近づけようとすることだろう。このふたりが演じる主人公の日常を延々と映し出す中で繰り広げられるのは、そうした結果の典型的な失敗例だ。
ちなみに、悪者的な役どころで登場するひまりというキャラがいるが、これを演じた人は本当に酷かった。申し訳ないが本当に観るに堪えなかった。
キレた役を演じてくださいと言われて精一杯キレて見せたのだろうが、素人のお遊戯でしかない。よくこれでOKが出たと思う。きっと演じた本人も完成した本編を観て黒歴史にしたいと思ったんじゃないだろうか。そう思ってくれないと観ているこっちも困る。
とにかく、観たいのは自然な演技であって、普通の人が無意識に話しているような、現実の日常のやりとりではない。それが例えば、しっかり練られたセリフがあれば良い。または内容のない会話を意図したセリフであれば。しかし観ている限りでは本当に意味のないセリフであり、ひょっとしたらアドリブであるのかもしれない。作り手側は演者に丸投げというわけだ。
何気ない日常と、殺し屋としてのハードなアクションのギャップを見せたいのであれば、こんなに長々と意味のないシーンを作らないで良いんじゃないだろうか。腕のいい監督であれば、この1/10にも満たない短いカットでそれを十分に伝えることができると思った。
ただ、主に作品の最終的な決定権を持つ監督による、〈自然な演技〉に対する根本的で致命的な大いなる誤解があるにもかかわらず、本作は面白い。
と言っても、ふたりの会話のシーンの多くをすっ飛ばして観た場合だが。
アクションシーンが非常に良いと思う。それがすべて。