土を喰らう十二ヵ月

つちをくらうじゅうにかげつ|----|----

土を喰らう十二ヵ月

amazon
レビューの数

80

平均評点

74.4(288人)

観たひと

385

観たいひと

34

(C)2022『土を喰らう十二ヵ月』製作委員会

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ヒューマン / ドラマ
製作国 日本
製作年 2022
公開年月日 2022/11/11
上映時間 111分
製作会社 『土を喰らう十二ヵ月』製作委員会(日活=バップ=読売新聞社=信濃毎日新聞社=日販=スターキャット=二見書房=スモーク)(制作:オフィス・シロウズ)
配給 日活
レイティング 一般映画
カラー カラー/ビスタ
アスペクト比 ヨーロピアン・ビスタ(1:1.66)
上映フォーマット デジタル
メディアタイプ ビデオ 他
音声 5.1ch

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督中江裕司 
脚本中江裕司 
原案水上勉
(『土を喰う日々 ―わが精進十二ヵ月―』(新潮文庫刊)『土を喰ふ日々 わが精進十二ヶ月』(文化出版局刊))
音楽大友良英 
料理土井善晴 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演沢田研二 ツトム
松たか子 真知子
西田尚美 美香
尾美としのり 
瀧川鯉八 写真屋
檀ふみ 文子
火野正平 大工
奈良岡朋子 チエ

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

水上勉による料理エッセイを原案に「ナビィの恋」の中江裕司監督が沢田研二主演で映画化。長野の山荘で犬一匹と暮らす作家のツトムは、山の実やきのこを採り、季節の移ろいを感じながら原稿をしたためる日々。だが13年前に亡くした妻の遺骨を墓に納められずにいた。共演は「ラストレター」の松たか子、「青葉家のテーブル」の西田尚美。原案エッセイの中に登場する豪快にして繊細な料理を再現したのは、料理研究家の土井善晴。2022年第96回キネマ旬報ベスト・テン主演男優賞受賞。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

立春。作家のツトム(沢田研二)は犬のさんしょ、そして13年前に亡くなった妻の八重子の遺骨と共に人里離れた信州の山荘で暮らしている。口減らしのため禅寺に奉公に出され、9歳から精進料理を身に着けた彼にとって、畑で育てた野菜や山で収穫する山菜などで作る料理は日々の楽しみのひとつであった。とりわけ、担当編集者で恋人の真知子(松たか子)が東京から訪ねてくるときは、楽しさが一段と増す。皮を少し残して囲炉裏であぶった子芋を頬張る真知子。そんな彼女の喜ぶ姿にツトムは嬉しさを隠しきれない……。立夏。山荘から少し離れたところに、八重子の母チエ(奈良岡朋子)が畑を耕しながらひとりで暮らしている。ツトムが時折様子を見にいくと、チエは山盛りの白飯、たくあん、味噌汁でもてなす。だが八重子の墓をまだ作っていないことを、今日もチエにたしなめられるのだった。自家製の味噌を樽ごとと、八重子の月命日に供えるぼた餅を持たされ、ツトムは帰路につく……。小暑。塩漬けした梅を天日干しにする季節。ツトムが世話になった禅寺の住職の娘・文子(檀ふみ)が山荘を訪ねる。住職に習った梅酢ジュースを飲みながら昔話をするふたり。文子は、亡き母が60年前に住職と一緒に漬けた梅干しを持参。「母は、もしツトムさんに会うたらお裾分けしてあげなさい、と言うて死にました」と文子。その夜、ツトムは作った人が亡くなった後も生き続けている梅干しの味にひとり泣く……。処暑。チエが亡くなった。義弟夫婦(尾美としのり、西田尚美)に頼まれて山荘で葬式を出すことになったツトム。大工(火野正平)に棺桶と祭壇、写真屋(瀧川鯉八)には遺影を頼み、通夜の支度に大忙しだ。東京から真知子もやって来て、通夜振る舞いの支度を手伝うことに。夜、思いがけなく大勢集まった弔問客は、チエに作り方を習ったそれぞれの味噌を祭壇に供える。葬儀のあと、真知子を栗の渋皮煮で労ったツトムは、「ここに住まないか」と持ち掛ける。「ちょっと考えさせて」と応じた真知子だが、しばらくしてふたりの心境に変化を生じさせる出来事が起こる……。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2023年2月下旬 キネマ旬報ベスト・テン発表特別号

日本映画ベスト・テン:

読者選出日本映画ベスト・テン:

2022年12月上旬特別号

REVIEW 日本映画&外国映画:「土を喰らう十二ヵ月」

2022年11月下旬号

「土を喰らう十二ヵ月」:インタビュー 中江裕司[監督]

「土を喰らう十二ヵ月」:作品評

「土を喰らう十二ヵ月」:エッセイ

UPCOMING 新作紹介:「土を喰らう十二ヵ月」

2024/11/26

90点

VOD/U-NEXT 


土と共に生きて、死ぬ

ネタバレ

丁寧な暮らしはそれだけで画になるのだと感心させられた。
大きなドラマが展開するわけではないのだが、セリやほうれん草の根についた泥が丁寧に落とされていく様や、小芋が囲炉裏で炙られる様がとても感動的で、最後まで画面に引き込まれた。
精進料理の数々がどれも本当に美味しそうで、個人的にはシンプルに茹でた柔らかそうな筍が一番食べてみたいと思った。
また啓蟄から始まり、二十四節気ごとのそれぞれの山の景色が堪能できる作品でもあった。

舞台は信州の山奥。
13年前に妻に先立たれた作家のツトムは、かつて禅寺で身につけた精進料理を作りながら、一人で慎ましい暮らしを送っていた。
時折東京から訪ねてくる真知子との恋人とも呼べない微妙な関係が面白い。
割と遠慮なく真知子に色々と手伝わせようとするツトムの姿が図々しくもあるのだが、おそらく彼に頼られることは真知子にとっても嬉しいことなのだろう。

真知子がいない時のツトムの日常はとても質素だ。
山菜を採りに出かけたり、畑を耕したり、家の拭き掃除をしたり。
身体を動かして、腹が減ったら山の恵みをいただく。

時折、彼は同じく一人で暮らす亡くなった妻の母チエのもとを訪れる。
どうやらチエは気難しい性格のようだ。
ツトムは亡くなった妻の遺骨をいつまでも家に置き続けていることをチエに咎められる。
ツトムは頭を下げて謝るものの、おそらく遺骨を墓に入れる意志はない。
いまひとつ真知子との関係を発展させられないのも、ツトムの心に妻の死がまだ大きな傷を残しているからなのだろう。

物語はチエの唐突な死で動き出す。
無責任なチエの息子夫婦は、葬式の一切をツトムに任せっきりにしてしまう。
ただ弔問客をもてなすために、ツトムが丹精込めて作る精進料理は本当に美味しそうだった。
もちろん真知子も手伝わされる。
結果的にツトムはチエの遺骨まで押し付けられてしまう。

やがて自分の死について考え出すツトム。
そんな折に彼は心筋梗塞で倒れてしまう。
真知子の発見によって一命を取り留めたツトム。
彼は救急車の中で「死にたくない」と繰り返していたらしい。

真知子は色々と考えて、ツトムと一緒に暮らすことを申し出る。
ここから真知子との仲が急接近するかと思えば、あっさりツトムは真知子の申し出を断る。
自分は一人で生きるのが合っているのだと。
こうして二人の関係は終わりを告げてしまう。

あれほど死にたくないと思っていたツトムが、死の準備をしながら生きることを決めるのも不思議なものだ。

人はどうしても先のことを考えてしまうが、それは視野を拡げているようで、実は狭めていることなのだ。
どれだけ先の心配をしても、その時が来なければ何も分からないのだから。
明日、明後日のことを考えるから、生きるのが億劫になる。
大切なことは、今日一日を精一杯生きることだ。

最後の瞬間まで清々しい作品で、都会で暮らしていると、色々なことを端折りながら生きているのだと改めて考えさせられた。

2024/11/16

2024/11/17

68点

その他 


いちばんの欠陥は

少なくとも一年間精進料理を喰っていたにしては沢田研二が太りすぎなこと。しかしまあ、これは亡くなった志村けんの代役ということで仕方がない(のか?)。松たかことの関係は最初わかりづらかったが、映画が終盤に至ってもやはり納得しづらいのであった。尾美としのり夫婦の話は露悪的で好感が持てない。これが遺作となったらしい奈良岡朋子については演技は流石と思ったのだが役柄については若干首を捻らざるを得ないのであった。

2024/03/29

50点

選択しない 


土井善晴の洗練された精進料理を思わず食したくなる

 水上勉の随筆『土を喰う日々-わが精進十二ヵ月-』が原案。
 タイトルは庭の畑で作った野菜を料理する菜食生活から。
 水上勉が軽井沢の別荘で執筆していた時期をモデルにしていて、立春から始まり、二十四節気毎にナチュラリストのツトム(沢田研二)の生活を追うという構成で、テーマは現代的。
 節気ごとの一年間の自然と生活を追う撮影が努力賞で、大きな見どころ。
 料理を担当するのは名料理人の土井善晴で、ツトムが禅宗の寺で修行時代に精進料理を学んだというには洗練された料理が並ぶので、思わず食したくなる。
 この四季折々の精進料理が本作のもう一つの見どころであり魅力ともなっているが、女性編集者(松たか子)との色恋話、義妹夫妻(西田尚美、尾美としのり)との挿話となる後半がつまらない。
 妻とは12年前に死別し、女性編集者と遠距離恋愛するという設定が平凡で、シナリオと演出が悪いのか演技が下手なのか、二人の恋愛感情がまったく伝わって来ない。
 女性編集者への同棲申し出も無茶苦茶で、どうやって東京に通勤するのかと首を傾げたくなる。さらに女性編集者が逆プロポーズを断られて新進作家と当てつけ結婚する挿話も安っぽい。
 義母(奈良岡朋子)の死を巡る義妹夫妻との挿話も橋田寿賀子のドラマのようで通俗だが、沢庵を切り、山椒を茶碗に載せる奈良岡朋子の老練な演技力には感服する。

2024/03/17

2024/03/17

20点

VOD/U-NEXT 


すみません、私の感性には合いませんでした

衣食住の中で私が最も重視するのは住。実家が長屋だったので隣家の生活音が気になって仕方なかった。一人暮らしを初めてからマンションは最上階角部屋しか住まなかったし玉野市では一軒家を借りていたほど。逆に拘りがないのは食。共働きの妻に負担を掛けたくないためでもあるが昼は妻からの配給の菓子パン、夜はレトルトカレーと青の洞窟と生協の握り寿司のローテーションでも全く不満は感じない。そんな私なので料理エッセイを基にした映画という時点で嫌な予感はしたのだ。

原案の水上勉は「越前竹人形」「はなれ瞽女おりん」などを精読した大好きな作家の一人であり、作中で彼の人となりや死生観をもっと深堀りしてくれたら興味深く観られたかもしれない。

精進料理を食し運動量も充分な筈の主人公ツトム役に沢田研二は明らかにミスキャストだ。この生活では太鼓腹になる要素が見当たらないもの。妻は「若い頃は色気があったのに見る影もなくなった」とぽつり。松たか子と別れて以降退屈で見続けるのが苦痛だったが映像は抜群に綺麗なので食に一家言あり『モリのいる場所』や『日日是好日』を楽しめる感性をお持ちの方には愛着が持てる作品となるかもしれない。

2024/03/15

2024/03/15

74点

選択しない 


自然と共存して、自然を喰らい感謝するみたいな話と丁寧に作られた料理の美味しそうなのに癒された。
後半の死への思いも良かった。
弟夫婦の酷さはありか?
というのと
精進料理食べて暮らして
あの体型はないかな。
というのを除けば良い作品だった。

2024/03/11

2024/03/12

68点

レンタル/千葉県 


主役は精進料理

主人公は水上勉と思わせる作家で1人信州の古民家で暮らす。
幼い頃口減らしのために禅宗の寺に奉公に出されたせいで精進料理の手習いある。
13年前に亡くなった妻の遺骨をまだ手元に置きながらも、妻の後輩にあたる編集者と恋愛関係にあるようだ。
ただこの関係性を生臭く描く事はなくひたすら淡い。
妻の遺骨を遺言通り川に散骨した後で、別れ話に訪れた女の赤いコートが唯一本作の異質な生命感を感じさせる。
主人公は自然の恵みを頂きながら、日1日を僥倖として生活する。
既に自然に回帰することを覚悟している。
先に義母が離れた小屋で孤独死して、その実子(義弟)らに葬儀を押し付けられても自然体で最大限のもてなしをして見送る。
この自然回帰する心境が、12ヶ月春夏秋冬季節の移ろいの中で彼の作る精進料理の有様と頂く姿に十分な余韻を感じる。
主人公を演じる沢田は60代の設定だがそうは見えない。
それでも色男だった時を経て穏やかな静謐を感じさせる。
ただ質素な食事なのに太り過ぎでは?
奈良岡朋子は本作が遺作だそうだ。
毅然としつつ余韻を残す演技だった。