前作で再びチャンピオンに返り咲いたロッキー・バルボア(シルヴェスター・スタローン)。又もや幸福な日々が戻り、妻エイドリアン(タリア・シャイア)の兄・ポーリー(バート・ヤング)の誕生日プレゼントにハイテク家事ロボットを贈るなどバブリイな生活をしてゐます。
サテ、ソ連のアマチュア王者イワン・ドラゴ(ドルフ・ラングレン)が来米し、世界チャンプのロッキーとの対戦を希望します。元世界チャンピオンのアポロ・クリード(カール・ウェザース)は、挑発的なドラゴ陣営に反発し、ロッキーの前にエキシビジョンとしてドラゴと対戦する事を希望し、無謀だと反対するロッキーを説き伏せます。
エキシビジョンマッチは、幕開けに何故かジェームズ・ブラウンが登場し熱唱、華やかに女性たちが踊る場違ひな雰囲気で開幕します。呆れたやうな顔のドラゴ一行。自信満々でリングに上るアポロでしたが、序盤こそ余裕を見せてゐましたが、ドラゴの本気のパンチを連打され、セコンドのロッキーがタオルを入やうとするもアポロは拒否、結局ダウンを繰り返し、そのまま倒れ命を落すのでした。
改めてドラゴとの対戦を決意するロッキー。しかし相手から示された条件は、無報酬の非公式戦で、会場はソ連ですると云ふもの。ロッキーは止めるエイドリアンを振り切り、アポロのトレーナーだつたデューク(トニー・バートン)とポーリーを連れソ連入りします。何でポーリーなんか連れて行くかね。役に立ちさうにないが。
常にKGB(?)の監視下にありながら、雄大な自然の中でトレーニングを行うロッキーに対し、ドラゴは政府前面バックアップの元、ハイテク機器なんかを駆使した訓練。やはり夫と離れられぬエイドリアンもソ連まで追つてきて合流、愈々決戦の火蓋は切られるのでした......
ロッキーシリーズも新展開の四作目、「ロッキー4/炎の友情」であります。原題は相変らずスィンプルに「Rocky IV」ですが、邦題には余計なサブタイトルが付されてゐます。本作もスタローンが監督・脚本・主演を兼任。頂点に立つた男が、次なる戦ひを挑むにはそれ相応の理由が必要なので、毎回ロッキーに動機づけをするのが大変です。
今回はソ連からやつて来た「シベリアの牡牛」イワン・ドラゴが相手。これまでの野獣系ではなく、無口でクールな印象ですが、そのパンチは、ロッキーの嘗てのライヷルにして現在は親友のアポロを死に追ひやる程の破壊力を秘めます。空手家ドルフ・ラングレンが好演し、自身の出世作としました。妻役を演じたブリジット・ニールセンは後にスタローンと結婚し、すぐに離婚してゐます。
サブタイトルのやうに、アポロとの友情が根底にあるけれど、もう一つ、冷戦時代の米ソ関係を準へた設定も注目であります。この辺は米国の帝国主義的な「正義」を振りかざす、お馴染みの視点が見られて鼻白むのでした。また、ロッキーを敵視してゐた大観衆が、試合が進むにつれてロッキーに肩入れをし「ロッキーコール」まで起こるのは良く分かりません。有り得ないでせう。ロッキーの「人は誰でも変ることができる」との言葉を敷衍する為の演出でせうが。「我々は二人で殺し合つたが、2000万人が殺し合ふよりマシだ」の言葉も唐突感があります。
それでもロッキーに甘い当方、予想通りのハピイエンドにほつとし、この心地良い予定調和を憎むものではありません。結局好きなのですねえ。ご無礼しました。