第2次大戦の影がしのびよる一九三八年、ローマ。ドイツの権力者ヒトラーがローマにやって来るという記念すべき日。式典が行なわれるその日は市民の殆どが広場ヘと赴いた。アントニエッタ(ソフィア・ローレン)は、六人の子供を持つ主婦。夫のエマヌエレ(ジョン・ヴァーノン)は、ムーソリーニの信奉者。悪い人間ではないが、妻に子供たちの面倒をまかせ、自分は友だちづき合いに忙しい。夫や子供たちを見送るアントニエッタ。静まりかえったアパートに一人残された彼女は、まだ残された山ほどある仕事を、うんざりしたような表情でやりはじめた。九官鳥のロスモンドにエサをやるのも仕事の一つだ。そのロスモンドが鳥かごから飛び出し向かいの階段にとまった。そのすぐそばの部屋に男の背中が見え、彼女は大急ぎで彼の部屋を訪ねた。彼の助けをかりて、ロスモンドをつかまえた。男はガブリエレ(マルチェロ・マストロヤンニ)と名のり、陽気に彼女に話しかけてきた。コーヒーの誘いをことわったアントニエッタにダンスを誘い、二人はルンバを踊った。その時、外からは、式典の実況を放送するラジオの音が響いてきた。ガブリエレは、顔をかすかにくもらせ、アントニエッタは、家にあわてて戻った。信じられないひとときであった。彼女は興奮している自分を感じた。気になって向かいの窓をのぞくアントニエッタ。ガブリエレは誰かに電話をかけていた。彼女が掃除にかかった時、ドアのべルが鳴った。ガブリエレだ。とまどいながらも彼を中に入れると共にコーヒーを飲んだ。そんな時、べルが鳴った。訪れた管理人の老女が「あんな売国奴とつきあうなんて」とアントニエッタを非難して帰っていった。不安になってきた彼女は、仕事があるからと、洗濯ものをとりこむために屋上へ上がった。なだめるように追って来たガブリエレと屋上で抱きあう彼女。しかし次の瞬間には、ガブリエレは彼女を自分から離し暗い表情になった。恥ずかしくなったアントニエッタは言った。「男なんて、みんな同じよ」。その言葉に、ガブリエレが口走った。「ぼくは違う。ぼくはホモなんだ」……思いがけない告白に狼狽し、彼女は彼の頬を打って部屋にかけおりた。しかし、時がたち心が静まると、いつも侮辱をうけてきたであろう男の心が痛いほど彼女にわかってきた。彼女も同じように、冷たい夫との生活の中で、知らぬ間に心が閉ざされていたのだ。彼女は彼の部屋を訪れ、お互いに、いたわり合うように愛しあった。この特別な日に、二人は特別の時を過ごした。夜、家族とのいつもの夕食を済ませた後、窓辺に立つアントニエッタ。外には、連行されてゆくガブリエレの姿があった。