貧しい上に少々足りない娘ジェルソミーナ(ジュリエッタ・マシーナ)は、オートバイで旅まわりをする曲芸師ザンパノー(アンソニー・クイン)の助手となって旅に出た。ザンパノーの呼びものは、胸の力で鎖を切ること、それに疑い深く、狡猾と欲情にこりかたまった男である。彼はさっそく暴力によってジェルソミーナを妻にし、金ができれば他の女を追いかけまわしている。ジェルソミーナのやさしい心も彼には通じない。脱走してもつかまってしまう。ちょうどその頃、二人は小さな曲馬団に参加した。ところが、その一団にいる若い綱渡り--人々から「キ印」と呼ばれている青年(R・ベイスハート)が、ことごとにザンパノーをからかい、彼が怒るのを見て手をたたく。本能的に、彼はザンパノーが気にくわないのだ。しかしジェルソミーナは、「キ印」がひくヴァイオリンの哀しいメロディに引きつけられ、彼と親しく口をきくようになる。「キ印」は彼女に、この世のどんなつまらないものでも、役に立つ時があるのだ、と語った。頭の足りないジェルソミーナも、この言葉には胸をうたれた。自分の運命はザンパノーと共にある……。「キ印」とけんかし、再び旅に出たザンパノーについて、彼女も苦しい日々を送りつづける。ところがある日、途上でザンパノーと「キ印」は顔をあわせた。そしてザンパノーは、怒りのあまり「キ印」を殺してしまった。誰も見てはいない。ザンパノーのオートバイは旅から旅へと逃避行をつづける。しかしこの事件はジェルソミーナに大きな打撃を与えた。昼も夜も泣き通しである。遂にもてあましたザンパノーは、雪の埋った山道に、彼女を棄てて去った。それから数年後、年老いたザンパノーは、ある海辺の町で、ジェルソミーナが好んで歌った「キ印」のヴァイオリンのメロディをきいた。聞けば、四、五年前この町で病死した気違い娘が、いつもこのメロディを聞かせていたという。その夜、酒に酔ったザンパノーは、海浜に出て、はじめて知る孤独の想いに泣きつづけるのであった。