イタリアの工場都市ラベンナ。林立する煙突からは絶え間なく煙がふきあげ、暗い冬の空をいっそう重苦しく淀ませている。ジュリアーナ(モニカ・ヴィッティ)は夫である工場の技師ウーゴ(カルロ・キオネッティ)と、息子バレリオの親子三人でこの街に住んでいる。彼女は交通事故にあい、そのショックからノイローゼで、一カ月入院したが、まだ完全に治ってはいない。ある日、彼女は夫を工場に訪ね、彼の友人コラド(リチャード・ハリス)を紹介された。コラドは南米パタゴニアに新しく工場をたてるため、ウーゴの力を借りにきたのだ。ウーゴからジュリアーナの病気のことを聞いたコラドは、彼女の底深い孤独が痛ましくてならなかった。数日後、コラドはウーゴ夫婦やその友人たちと海辺の小屋へ遊びに出かけた。そこでの乱痴気さわぎは、ジュリアーナにとっても楽しく彼女の顔はいつになく明るかった。しかし、やがて近くに碇泊していた船に伝染病が発生したらしいとわかった時、彼女の神経は乱れた。小屋をとびだした彼女が、車を桟橋の突端に急停車させたのを見た友人たちは、ただ黙って痛ましげに見守っているばかりだった。何故なら彼らは、ジュリアーナが、かつて自殺を図ったことを知っていたからだ。ウーゴが出張したあと、心細さと空しさが、ジュリアーナをコラドに近づけた。そして最愛の息子バレリオが急に歩くことが出来なくなったときのジュリアーナは半狂乱だった。しかし、それからほどなくバレリオがケロリとして歩きまわっているのをみた彼女は裏切られた思いだった。息子でさえ自分を必要としない……。彼女はコラドの腕の中に身を投じるのだった。しかし、かりそめの情事で心が満たされるわけもない。孤独や不安の影のない世の中があるだろうか……。彼女はこれが自分の人生だと、自らに言いきかせるのだった。