エリザベート・フォグラー(L・ウルマン)は、今や舞台女優として確固とした地位を築き、家庭生活においても善良な夫(G・ビヨルンストランド)と可愛い息子に恵まれ、至極幸福であった。ところがある日、彼女は舞台で「エレクトラ」に出演中、突然セリフが喋れなくなってしまった。それはほんの一瞬間の出来事だったから、別に大したこともなく無事演技を終えたのだったが、数日後、その発作が再発、彼女は言葉を失うと同時に、身体の動きをも失ってしまった。まる三カ月の精密検査にもかかわらず、精神的にも肉体的にも何ら欠陥をみつけ出せなかった。そこで担当の女医はエリザベートに、バルト海に面した自分の別荘への転地療養をすすめた。エリザベートはつきそいの看護婦アルマ(B・アンデルソン)がひどく気に入った。そしてアルマも言葉にならぬエリザベートの意志をたちまち理解出来るほどになった。ある日アルマは聞き上手なエリザベートにせがまれて、過去におかしたいまわしい自分の誤ちを話した。エリザベートにとって、健康でたくましいアルマの肉体はまぶしく、その上アルマの官能性が自分にのり移ってくるように感じられた。アルマはある日、女医あてのエリザベートの手紙をぬすみ見て驚いた。そこにはアルマが名前も素姓も分らぬ男たちと戯れた白昼の浜辺の出来事、そのあげく妊娠してしまい、同棲していた医学生に堕胎医を探してもらった思い出話--が、細かに書かれていた。アルマは怒った。二人の仲は裂かれた。その頃から夢ともうつつともさだかならぬ状態の中で、エリザベートとアルマの肉体は入れかわり始めたのだ。反目する二人。しかし、ある日、エリザベートの夫が訪ねてきて、アルマのことをエリザベートと呼びかける。アルマはもはや自分が誰であるか分からなくなる。アルマは、エリザベートに息子のことを話すように強要するが、エリザベートは答えない。そんな彼女に、アルマは「私が話す」と、エリザベートと息子のことを、まるで自分のことのように語り始める。入れ替わりエリザベートが語り、アルマとエリザベートの肉体はやがて一つになる。取り込まれないよう必死で抗うアルマ。そうして、アルマは何度もエリザベートを殴りつける。「私はあなたのようにならない!」――翌朝、何事もなかったかのように、帰り支度をすませると、アルマは一人でバスに乗り、町に戻って行くのだった。