イングランドの南部ウェセックス地方は、豊かな牧羊地だった。牧羊農民のゲイブリエル(A・ベイツ)は、隣人のバスシーバ(J・クリスティ)に結婚を申し込んだが、きっぱりと断わられた。その後ゲイブリエルは、すべての羊を失い、一介の羊飼いとして、ある農場に雇われた。ところがこの農場の主人はバスシーバだった。伯父の死で農場を受けついだというのだ。この農場にはファニーという女中がいて、彼女は評判のよくないプレイボーイの軍曹トロイ(T・スタンプ)と結婚することになっていた。結婚式当日。彼女は教会に来るのが遅れ、トロイの怒りをかって、この話は立ち消えになった。バスシーバの隣人にボールドウッド(P・フィンチ)という豪農の独身男がいた。バスシーバが、からかい半分に恋文を送ると、彼の方は本気になってしまい、結婚を申し込んできた。しかしバスシーバの心を深くとらえていたのはトロイだった。やがて二人は結婚した。しばらく後、ファニーが死に、彼女の死はトロイの心に深い悲しみと悔いを残した。そしてトロイは、どこへともなく去っていった。消息のない彼を、人々は死んだものと思うようになった。そして再びボールドウッドがバスシーバに求婚してきた。男の熱意に負けて彼女もこれを受けいれ、盛大なパーティが開かれた。その夜、トロイは帰ってきた。ボールドウッドの銃が火をふきトロイは倒れた。夫に取りすがり、気違いのように彼の名を呼びつづけるバスシーバ。ボールドウッドは獄舎につながれる身となった。それから八ヵ月。夫の墓の前で、バスシーバはゲイブリエルに会った。彼はカリフォルニアに発つため、別れを告げに来たのだ。長い間、一緒に働いていた人、というより、彼女にとってゲイブリエルは、もはやなくてはならない人だった。ずっと昔、求婚を断って以来、何年になるだろう。しかし、彼の変らない誠実な愛が、彼女の胸の中で大きく広がっていくのだった。