その赫い髪の女が光造の部屋に来てから何日かがたっていた。女が部屋に転がり込んでから、繰り返し交接したためか、愛欲のうねりが、いまだに光造の体に残っている。女に声をかけたのは仕事の帰り道であった……。その日から、光造は自分の部屋で女と一緒だった。裸になった女の乳首は黒く、女には二人の子供があったという。光造は、それ以上のことを女に訊ねなかった。実際女に何を訊ねてもしかたがない。それは、口笛一つでついて来た犬をあれこれ詮索しても、結局はその犬を飼うのか、追い払うのかどちらかしか道がないように、光造には女を部屋に居続けさせるか、否かの二つの方法しかないのだから。光造の仕事は、会社から派遣され、土方の組に出かけ、ショベルカーやブルドーザーを運転することだ。ところで、三ヵ月ほど前、光造は、同僚の孝男とともに、自分の勤める会社の社長の娘、和子をマワしてしまった。その和子が妊娠してしまい、孝男に駆け落ちをせまっていた。よどんだ街、よどんだ人間関係の中で、和子は孝男と逃げ場を求めていたのかもしれない。暫くして、光造は女を姉の家に連れていくが、姉は赫い髪の女をどこかで見かけたことがあるという。その言葉は女をひどく恐がらせたようだが、光造には、女の過去など、どうでもよかった。女がいるだけで充分だった。孝男と和子がこの閉塞したような街を出ていく日も、光造と赫い髪の女は愛欲のうねりの中にいた。女は光造にまたがり、乳房をこすりつけるように体を倒してきた……。光造は、女の赫い髪を見続ける。赫い髪は美しい……。