田上悠三はプロ野球の審判員として、今日も若い審判員、今村たちの勤務ぶりを厳しく観察していた。グランドでは、二軍同志の試合が行なわれ、その中でクロスプレーの末、今村の優柔不断なジャッジに腹をたてた選手の一人、原が今村を突き倒した。これを見た田上はコミッショナーに報告するとともに、今村たちを厳しく叱った。やがて一軍のナイターが始まり田上は主審のポジションに全神経を傾けた。そんなある日、田上家に一カ月の出場停止を喰った原が、田上のスパルタ教育を受けたいと知人の紹介でころがりこんで来た。むげに追い帰すわけにもいかず、ぐずぐずしているうちに、掃除を手伝うやら、わんぱくぞろいの子供の世話をやくやらで、いつの間にか田上家の一員として生活するようになる。妻の尚子は、ナイターのある夜はテレビのナイター中継を見ながら田上の帰る時間を予想して食事の仕度をするが、ちょうどその夜の試合は田上の判定をめぐり、監督との間に激しいトラブルが起った。尚子ははらはらしながらこれを見守っていたが、翌朝の新聞は田上の判定が正しかったことを報じた。次の試合で球場入りした田上がユニホームに着がえている時、先輩の小島塁審が脳内血栓で倒れ危険状態になってしまう。田上はさっそく家族に連絡をとったが、小島の妻は新興宗教にこり、高校生の娘雅子は学園闘争で学校に泊りこんでいて家にはよりつかないありさまだった。田上と原はバリケードの学園にふみこみ、いやがる雅子を無理やり病院につれていったが、親娘の和解のないまま、小島は息を引き取った。そんなことが縁となり雅子の学園の理事からバスケット部のコーチ役を依頼された。昼間だけならということでしかたなく引き受けたものの、タバコをふかす者、シンナー遊びをする者などで部の風紀は乱れに乱れていた。あまりのひどさに怒った田上は全員を集め総ビンタを喰すなど彼一流のスパルタ教育が始まった。やがて夏休みに入り、田上家では、学と稔の成績がガタンと低下、父兄の呼び出しがあった。学校では父親不在の家庭に多い精神不安定児だと言われ、途方にくれた尚子は、田上に不規則な生活の審判をやめてくれるよう頼むが、田上はガンとこの頼みを聞き入れようとしなかった。子供達もいっしょに遊んでくれようとしないパパに激しい不満を抱いていたため、尚子と結束してストライキ体制に入った。そして全員で田上の父義郎の家に出かけてしまった。