ひと昔前、上州で名を売った柔政の娘、太田まさ子は渡世修業のため各地を点々と旅していた。大阪に立ち寄ったまさ子は、博徒南田一家の賭場で宇野の船宿浜幸の息子良吉を徹底的に負かしてしまう。博奕で負け、その上、三百円の借金まで背負った良吉は、この博奕はいかさまだといってまさ子に刃を向けたが、その時、この前田一家の客人としてワラジをぬいでいた梅田の銀三が飛び出し、良吉を殺してしまう。賭博の胴師をつとめたまさ子は、やくざの掟に従い、賭けの借金取立てを引受けるとともに、良吉に対する多少の憐れみもあって、良吉の故郷宇野へと旅立つのだった。その旅の途中、元やくざで今は渡り床職人として旅をする音羽清次郎と出逢ったまさ子は清次郎の人柄に魅かれるようになった。宇野へとやってきたまさ子は、幸作と盲目の妻おしのに歓迎されるうちに、二人の暖かい心に打たれた。幸作は、良吉が背負った、三百円の借金を作るために、船宿の権利証を担保に金融業者の小西に金を貸り受けるが、小西が暴力団滝島組とつながっていたため、権利証は滝島の手に渡ってしまう。この街に遊廓を作ろうと前々から幸作の土地を狙っていた滝島は、権利証を手に入れると、これをタテに幸作や、それに続く長屋の住人に圧力を加え始めた。金を受取ったものの、こういった事情を知ったまさ子は滝島組に乗り込み、権利証を返すように頼むが、滝島は受けつけなかった。その頃、まさ子に横恋慕する銀三は、滝島組の助勢のため南田とともに、宇野に到着した。数日後、まさ子と共に宇野にきていた清次郎は、銀三と会った。清次郎は、銀三に弟の勘次郎を殺されたことから床職人となって銀三を捜し続けていたのだった。幸作に恩義のある清次郎は、船宿の権利証と引きかえに助命をこう銀三を見逃した。無事権利証が幸作のもとに戻ったのも束の間、滝島組の作業員として働いていた三蔵が幸作に助けを求めてきたため、これをかくまったことから、幸作は銀三に殺されてしまう。おしのの閉された瞳から流れる涙を見たまさ子は、この知らせを聞いて駈けつけた清次郎と共に滝島組へと殴り込んでいった。まさ子は傷付きながらも滝島を討つが、清次郎は銀三たちと相打ちとなり倒れる。まさ子に抱きかかえられながら清次郎は「姐さん。お前さんだけは日向に咲かしてあげたかった。」と言い残し事切れる。警察に連行されるまさ子を人々は冷たい目で見送るが、おしのは必死でまさ子の名を叫ぶのだった…。