日本全国で米騒動が頻発する大正中期、東京・山の手の花街の夏。料亭“梅ヶ枝”では、おかみが芸者・袖子を待ちかねていた。客の信介は、三十歳半ばのちょっとした役者風のいい男で、世の中は米騒動で騒々しい最中なのに遊びに興じようという根っからの遊び人である。座敷に通された信介は、袖子の恥かしそうな仕草がもどかしい。信介が上になって布団をはがそうとすると「初めてですもの、恥かしい」と電気スタンドの明りを暗くする袖子……。外では号外の音が鳴り、騒がしい。置家、“花の家”では、芸者の花枝と花丸がすっかり仕度を整え、あてのない客を待っていた。一方、信介の動きがだんだん激しくなるが、袖子は半分お義理である。そのうち信介が横になると袖子も仕方なしに横になる。やがて、袖子の鼻息も次第に荒くなり、夜具は乱れ、枕はきしみ、伊達巻も徐々に乱れてくる。そして、信介の動きにつれて、袖子はもう気が遠くなりかけていた。袖子は初めの様子とはうって変り、次第に激しさも加わり、枕がはずれても直そうとせず身悶えるのだった。そんな袖子の乱れる反応を、信介は反り身になって見つめていた。やがて、信介は袖子の様子を見ながら、じっと辛棒していたが、袖子が「あれ! どうぞ」と髪が乱れるのにもかまわず泣きじゃくるのにとうとう我慢ができなくなり、袖子におおいかぶさっていった……。そして、二人は一息入れた後、二度、三度と頂点を極めるのだった。