陸奥の国、岩代。その村里に帝の御料地を預る父の岩木判官正氏と、母八汐に育てられ、安寿と厨子王丸の姉弟が犬のらん丸や山の動物たちを友に、幸せな日々を送っていた。ところが、父判官の上役鬼倉陸奥守が安寿を嫁にほしいという難題をもちこんだ。思いどおりにならなかった鬼倉は、禁猟区を犯し、御料林を焼いた。その責任を判官に押しつけ、関白藤原師実にざん訴した。それから半年、判官は都に召出されたまま帰らなかった。更に鬼倉は、館の開け渡しを要求した。安寿と厨子王丸は、母にはげまされ、侍女の菊乃と飼犬のらん丸、仔熊のモク、ねずみのチョン子を連れ、都への旅にのぼった。直江津で、橋下に野宿しているところを山岡太夫が親切げに近づいてきた。人買いとは知らず、母子はその口車にのってしまった。由良への舟便だとだまされて、八汐と菊乃の舟は北へ、安寿と嵐子王丸の舟は西へ。やがて安寿と厨子王丸は、強欲非情な山椒太夫に売られた。なれぬ労働のあけくれが始まったが、山椒太夫の息子三郎がやさしい手をさしのべた。しかし、三郎の兄の次郎に見られ、姉弟はさらに辛い仕事をやらされるようになった。ある日、安寿は厨子王丸に、都へ逃れて父を探すように言った。厨子王丸は泣きながら山を下った。これが知れて、安寿は牢に入れられた。次郎と三郎が争っているうちに安寿は池の畔へ逃れた。深い霧が彼女を包むと、やがて水面から一羽の白鳥が飛びたった。岸辺には脱ぎ捨てた安寿の草履が残っているだけだった。--清水の境内。唄いながら歩く関白藤原師実の娘のあや姫にならず者が襲いかかった。そこへ厨子王と動物たちが来合わせ、姫を救った。その功により厨子王は師実に面会することが出来た。九州に流罪されていた父の判官はすでにこの世の人ではなかった。--やがて、厨子王丸は立派に成人した。怪物を退治した功績によって、陸奥の国の国守と平正道の名を賜った。お供の動物たちを従えて任地へ旅立った。途中に待伏せしていた山椒太夫の刺客を追い払い無事に到着。三郎が安寿の最後を報告した。厨子王丸は母をたずねる旅に出る。彼を導くかのように白鳥が一羽空を行く。庭先で雀を追う一人の老婆。母八汐だった。故郷へ帰る船上には、幸せそうに寄りそう母子と動物たちの姿があった。上空には別れを惜しむかのように白鳥が輪を描いていた。