浪人山崎蒸は恋人志満の反対にも拘らず、当時京都で活動を起しはじめていた壬生の新選組へ入った。そこには彼が惚れ込んだ武士らしい男、近藤勇がいたからである。だが局長の芹沢はとかく粗暴の振舞いが多く、苦言する近藤らは無視されがちだった。土方歳三は、或る夜芹沢の寝込みを襲って惨殺した。そして、近藤が局長、土方が副長におさまった。蒸は土方の陰険な策謀に反発した。蒸のそのような純粋さを危険視していた土方は罠をかけた。そのため蒸は公儀役人を斬ってしまった。土方はそれを口実に切腹を主張したが、近藤は逃亡の形で蒸に勤皇方の探索を命じた。母方に帰った蒸は志満と結ばれた。蒸は百姓上りの少年隊士彦平を助手に勤皇浪士の動静を探った。そして勤王方の黒幕古高俊太郎のかくれ家をみつけた。新選組に捕えられた古高は、土方の残酷な拷問にあい、同志の集合場所を四国屋と白状した。時を同じくして、蒸の情報は池田屋と知らせてきた。土方は蒸の情報に疑いを抱き、全員の四国屋襲撃を主張したが、近藤は蒸に賭け、斬込み隊を二手にわけた。そんな頃、挙動を怪しまれた彦平は人斬り久蔵に池田屋に引きずりこまれ、蒸が池田屋に飛びこんだ時は、彦平は斬殺されたところだった。蒸と久蔵の激しい斬りあいがはじまった。そこへ新選組がかけつけて来た。三十余各の浪士たちと新選組の凄烈な血戦がはじまった。一時は苦戦におちいった新選組であったが、誰もいない四国屋から引返して来た土方隊の応援に勝利は新選組に帰した。かくて土方は蒸の功労に潔よくカブトをぬいだ。近藤と蒸の信義が美を結んだのであった。