出版社「婦人春秋」では、組合幹部の伊達、黒木、井本らが従業員の賃上げをめぐって小川社長と激論をかわしていた。アパートに戻った黒木に社長から電話がかかった。黒木は「無期限ストに入りました」と答えた。彼は副委員長の地位を利用し、会社側に情報を売っていたのだ。社長からは将来の重要な地位が約束されていた。その夜、黒木はバーで良重に会った。二人は学生時代左翼運動をした仲だった。肉体関係もあった。黒木は良重がアルバイトに家庭教師をしていた先の夫人、小川社長夫人・頼子と関係を結びその口ききで入社したのだ。それ以来会っていなかった。数日後、黒木は良重から電話を受けた。ホテルで会った。同じく学友で、黒木の裏切りを忘れぬ合田が良重に様子をさぐらせたのだ。合田は弾圧の際、片足不具になり今は左系の労評で仕事をしていた。良重は黒木が組合分裂工作の資金として社長から大金を受取っていることを知ったが、合田には言わなかった。組合は分裂した。財界の実力者江藤の応援と、黒木の裏切りが原因だった。黒木は江藤に近づく手段を狙った。だが、その前にしておかなければならぬことがあった。無用となった頼子夫人との関係をかたづけることだ。情交の後、頼子の老醜を罵倒した。黒木は江藤の娘文子の素行調査をした。近く政界の大立者羽仁の息子と結婚すること、学生時代に男と遊んだことがあることなどを知った。黒木はこれをネタに文子を脅迫した。暴力でその肉体を奪った。やがて、文子は黒木のトリコとなった。羽仁との婚約解消、黒木との結婚を父に迫った。事態は黒木の思うままに進展した。一方「婦人春秋」の争議は最悪の段階に達した。第一、第二組合員が乱闘となり、警官、暴力団まで介入した。井本が逮捕された。黒木は良重との最後の情事を楽しんでいた。合田が現れた。「離れろ!俺の女房から」と絶叫した。良重は、黒木が社長から大金を受取っていたことを合田に告げた。黒木と文子との婚約発表は明日に迫った。文子に送られて、黒木はアパートに戻った。その入口に釈放された井本がひそんでいた。ドスを持った体をぶつけた。黒木は苦痛に顔をゆがめ、やがて意識を失った。