華やかな港祭りに街はごったがえしていた。事件はその街の片隅のホテルに始まる。ホテルの掃除夫の清之助は、息子の千代太の帰宅を心待ちにしていた。その恋人夏子も来ていた。前科のある千代太が就職できたお祝いなのだ。が、帰って来た千代太は意外にも悄然としていた。そして、帽子を紛失してきたことに気づいた彼は、探しに再び出ていったが--。街々の祭提灯には灯が入り、にぎやかな踊りの行列が流れ始めた。だが、地下のキャバレーではダンサーがストライキを起して、支配人の相良は慌てていた。間もなく、千代太が自殺未遂の葉子という女を救けて帰って来た。と、そこに、三人の刑事が紛失した帽子を証拠にその夜起った銀行ギャングの容疑者として彼を捕えに来た。しかし、千代太は無罪を主張し瞬時の隙を見て闇の中に姿を消した。葉子の父牛島は娘の行方を気にしていた。葉子が自殺を図ったのは、父の悪事を知り彼女の潔癖が、それを許さなかったからだ。牛島は密輸をはじめとする暴力団のボスだった。その頃、ホテルの人のいない各部屋には札束が投げこまれた。清之助は千代太の仕業と早合点した。人々は得体の知れぬ札束を抱いて、ホールに集まり乱痴気騒ぎに興じていた。葉子を探していた牛島が千代太を見つけて発砲した。清之助は重傷の千代太をかくまい、夏子に一目逢わせようとした。真犯人が捕ったと知らされたのはそれから間もなくだったが、千代太には時すでに遅かった。