江戸の町に偽の眠狂四郎と名のる手練の辻斬りが現われた。狂四郎はこの偽者を追うが、逆に捕手にかこまれ、文字若の家に難をさけた。お祭の吉は偽者を追い、御浜御殿の中で高姫と対座する偽者--実は白鳥主膳と、狂四郎の所在を告げている与力松永左京を発見する。この高姫は将軍家斉の娘だったが、今は薬種問屋・相模屋にあやつられ、主膳の辻切りに加担している。相模屋は公儀の目を辻斬りに向けさせ、そのすきに元勘定奉行・兵頭掃部が老中の命で隠匿した小判五万両を横領しようとしているのだ。高姫のことを心配する伯母・紀州家の御台所千寿院は、老中水野越前守の用人・武中仙十郎を通じ、政治の安泰のため狂四郎に辻斬りを斬れと命ずる。数日後、主膳から狂四郎へ果し状が届いた。それを知った取締与力の鈴木進十郎は二人が果し合いの場所と決めた上野寛永寺をかこみ、進十郎が主膳に斬られると、かわって指揮をとった松永左京は、狂四郎の追撃を妨害するのだった。その頃、相模屋は掃部を御浜御殿に檻禁、その娘で盲の百合枝までとらえていた。ある日この邸に千寿院から贈物と称して狂言師宗鶴の一行が訪れ、その中には狂四郎も吉もまじっていた。だが、彼等は発見され、掃部のいる地下牢に落された上、高姫によって仕かけられた爆薬に火が点じられた。危しと見た時、宗鶴--実は紀州家家来山本兵衛がかけつけ、彼等を救い出したが、地下牢は一大音響と共に崩れ、掃部は「娘の目を治して下され」と云ったまま息絶えた。武部の家で、狂四郎が百合枝の眼をしらべると、実は義眼で、その中に五万両の在りかの地図かかくしてあった。だがその時、すでに大金は相模屋によって盗まれ、荷物にまぎれていずこへか送られようとする。だが、相模屋が小判を一人占めしようとするのを見た偽狂四郎・主膳は、相模屋の荷を守る松永を殺し、そこに現われた狂四郎は主膳を斬った。相模屋も捕方に追われて絶壁から身を投げた。