北海道--アイヌ研究家池博士に案内された女流画家、佐伯雪子は、亡びゆく民族、アイヌのために悲憤の血涙をしぼる青年“ビヤッキー”風森一太郎の噂を耳にした。一太郎の闘いは悲痛なものであった。しかも原始の血の燃えるように激しいものであった。愛と憎しみがたぎりたつ闘いであった。雪子は、ふとしたことからミツという女性を知った。彼女は一太郎の姉だった。かつての日、アイヌなるが故に恋に破れた彼女……。その日から一太郎はアイヌ民族のために闘う運命にあったのだ。深い感動につつまれた雪子は釧路に行った。一太郎を求めて酒場カバフト軒に行くため。カバフト軒には美しいアイヌ、鶴子がいた。愛する女の本能で、二人の女は対決した。折しも、一太郎は、アイヌでありながら日本人を粧ってアイヌを近づけぬ、大漁場の持ち主大岩老に反省を求める書状を持って来た。二人のうち一人が使者に選ばれる--二人の女は激しく対立し、賭けの結果雪子が勝った。しかし、大岩老に反省の色はなかった。突如として漁場を襲った一太郎の馬のあとには、いつしか雪子がしっかりとしがみついていた。森深い小屋にたどりついた二人の間に激情の嵐がたぎった。その頃、大岩老の一子、猛から、決闘の意を表わす山刀がとどけられた。場所はノタップ岬のチャランケの丘。合図はベカンベ祭の鶴の踊。折しも、ツルの病室に、かつての恋人杉田が悄然と現われ、アイヌの純血を守ると言うことがいかに無駄かと一太郎にさとす。しかし彼は黙って去った。「ダーン」と一発、一太郎の顔は血に染った。が、ついに猛を組み敷いた。苦悶の下で猛が叫んだ「お前も混血だ!」何のために今日まで闘ったのか……一太郎はあてもなく丸木舟を漕ぎ出した。雪子もまた北海道を離れなかったという。