ある日、正体不明の大怪獣が東京湾に現れ、首都・東京を壊滅状態に追い込んだ。一方その頃、福井県坂井郡三国町の住民たちは、そのニュースを報じるテレビ番組をどこか他人事のような感覚で見ていた。仲良し奥さんたちや家族と、食料を買い込んだり預金の心配をしたり怪獣について論じたりと大騒ぎの専業主婦・田所君枝。自分史「不死鳥の街に生きて」の完成を目前に控えて、追い込みをかけている老人・大沢彦二郎。遂に裁きの時がきたとばかり、布教活動に熱を入れる新興宗教の信者・桜沢亮子。そして、その勧誘にまんまとひっかかる三浪の受験生・小暮隆。更に、君枝の友人の伸子の娘・千恵子は怪獣騒動にキレた教師・堀に襲われ、東京からやってきたバンド、サマータイムのメンバーは福井見物に乗り出す始末。また、若いカップルの瞬也と朋美は、朋美の妊娠問題で怪獣どころの騒ぎじゃない。しかし、彦二郎の娘・桂子だけは東京にいる恋人の安否を気遣い気が気ではなかった。そんな矢先、怪獣が進路を変え、北上を始めたのである。このままでは福井にやってくる可能性が! 政府の要請でアメリカから送られてきた巨大空母・インディペンデンスも、時を同じくして発生した大地震による津波であえなく転覆してしまい、自国の自衛隊も頼りにならないことに気づいた三国町の人々は、漸く慌てふためく。ブラウン管を通しての恐怖は、もはや今そこにある危機となって三国町の住人に襲いかかってきた。とその時、九州は福岡県に突如亀の形をした第二の怪獣が現れ、ふたつの怪獣は琵琶湖付近で激しく戦い始める。これで一安心。胸を撫で下ろす住人たちであったが、暫くするとふたつの怪獣はそれぞれに行き先を変えて動きだし、しかも第一の怪獣が福井に迫ってきた。焦った住民は敦賀にある原発へ向かった。原発の近くにいれば、近隣の中国や韓国が守ってくれるだろう。だが、その読みは甘かった。東アジア三国が発射したミサイルは、誤って避難した住民たちの上に落ちてしまったのである。その後、ふたつの怪獣はそれぞれに海に消えていった。そして、生き残った三国町の住民は稲藁で作った怪獣を海に流し、その魂を鎮めるのだった。以来、その行事はこの地方の伝統祭事として20世紀に続いている。