東京の中堅広告代理店に勤務する駆け出しのコピーライター・相葉志乃は、不倫相手の上司・橋爪常務の夫人から手切れ金を渡された上、大阪支社の営業部へ転属された。「願っても叶わない、信じても無駄」そうやって自分を傷つけずに生きてきた彼女は、理不尽な人事を受け入れ新しい職場に出勤するが、そこにはもうひとり中途採用で入社した前野悦朗という新人がいた。「ま、ええんとちゃいますか」が口癖の彼は、何があっても明るく笑っているちょっと変わった青年だった。ある日、得意先の玩具屋の社長・丸山の接待の席で失態を演じた志乃は、しかし前野のとっさの機転から逆にクリスマス向けの広告を任されることになる。クリエイティヴな職場へ復帰出来るチャンスだ。だが、今の志乃には重圧ばかりがかかる。そんな彼女の心を癒し励ましてくれる前野。お陰で、彼女は丸山社長も納得の素晴らしいCMを作ることに成功する。ところが、仕事を終えた彼女に前野の訃報が届いた。実は、彼は以前から心臓に病気を抱えており、志乃の説得で2度目の手術を控えていたのだが、間に合わなかったのだ。それから数日後、前野の住んでいたアパートを借りることにした志乃は、もう少し大阪で頑張ってみようと心に誓うのだった。