太平洋戦争中、利助(染谷将太)は、身体が弱い自分を余計者だと思い込み、母親(洞口依子)の心配をよそに、畑仕事に精を出していた。1945年8月15日正午、玉音放送を聴いた利助は“新しい男”に生まれ変わったと感じるが、その後、喀血、山の中にある結核療養所〈健康道場〉へ入る。そこでの治療法は屈伸鍛錬や、塾生(患者)の背中を助手(看護婦)がブラシで擦る日課など独特の慣習があり、助手から「がんばれよ」と声をかけられたら、「よしきた」と答えるのが決まりであった。塾生も助手も互いにアダ名で呼び合い、利助もすぐに“ひばり”と名付けられる。詩人のつくし(窪塚洋介)の結核が完治し、晴れて退場、入れ替わるように新しい組長(看護婦長)として竹さん(川上未映子)がやってくる。以後、ひばりは、つくしを恋しがる助手のマア坊(仲里依紗)のことや、竹さんのことなど、日々の思いをつくし宛に手紙で伝えるようになっていった。具合が悪かった鳴沢さんが亡くなり、場長(ミッキー・カーチス)は講話放送で、人間を永遠に不幸に悶えさせることになった「パンドラの匣」に触れ、「諸君はひそかに『希望』という文字が書かれた石を探すべく鍛錬に励んでいる」と伝える。ひばりのいる桜の間に大学生の固パン(ふかわりょう)がやってきた。助手相手に英会話を披露する固パンにカチンときたかっぽれ(杉山彦々)は口ゲンカを始めるが、最年長の越後獅子(小田豊)が仲裁に入る。ひばりの手紙から竹さんに興味を持ったつくしが遊びに来ると、彼は竹さんをすごい美人だと評し、越後獅子の正体が「オルレアンの少女」を書いた詩人・大月花宵だと明かす。そんな中、久しぶりに、ひばりの母親が差し入れを持って訪ねて来た。別れ際、ひばりは母親の口から竹さんの縁談を知る。ひばりは初めて自分の気持ちに正直になり、竹さんに一目会ったときから恋をしていたことに気付くのであった。