昭和36年。島根県安来に住む29歳の布枝(吹石一恵)にお見合いの話がくる。相手は境港出身で10歳年上、戦争で左腕を失い、現在は東京で漫画を描いている水木しげる(宮藤官九郎)だった。二人はお見合いからわずか5日で結婚するが、上京した布枝が見たのは、花の東京とは程遠い底なしの貧乏暮らしであった。質屋通いも日常茶飯事、食パンの耳や道端の野草は二人にとって大切な食糧源。そして、互いに目も合わせられず、言葉もほとんど交わさないぎこちない生活が続いた。そんなある日、しげるの原稿を出版社に届けた布枝は、「暗い漫画は売れないから」と、約束の半分しか原稿料をもらうことができなかった。漫画のことも、しげるのこともよくわからない。そんな悔しさのこみ上げる布枝の前に、妖怪漫画をただひたすら毎晩遅くまで描き続けるしげるの姿があった。これほど努力をしているのだから、世間に認められないまま終わるはずがない。この努力がムダに終わるはずがない。布枝の心の中で、ある強い感情が芽生え始めていた……。