1976年。八百屋の2階に下宿している天涯孤独の高校生の大介は、ある日不良学生にからまれていたサキを助ける。大介に一目惚れしたサキは熱烈なアタックを開始。初めは調子が狂いっぱなしだった大介もいつしか彼女に心を開くようになり、やがて二人は相思相愛の仲へと発展していくのだった……。1978年。19歳になった大介とサキは、猛反対するサキの両親を説き伏せて結婚を承諾させ、79年元旦に婚姻届を提出。だがお金がなくて結婚式ができず、サキはショーウインドウのウェディングドレスを憧れの眼で見つめる。大介はそんなサキを必ず幸せにしてやると誓うのだった。そして二人に時計屋の主人が囁く。「振り子時計は繊細なんだ。右、左、動く振り子が正確な時を刻む。少しでも振り子がバランスを崩すと正確に動かない。振り子時計は夫婦みたいなもんだ。共同作業で何年も何十年も時を刻んでいくんだからね……」1980年。大介とサキに待望の子供が誕生。心晴(こはる)と名付ける。1985年。大介はバイク修理店をオープンさせることになった。小さくとも一国一城の主となった大介を、サキは祝福。裕福とはいえないが満ち足りた日々であった……。1993年。後輩に勧められ、大介はバイク20台を買い取ることになった。これで念願のバイク販売を始めることができると喜んでいた矢先、実は詐欺であったことがわかる。残されたのは借金のみ。やむなく店をたたみ、サラリーマンとして慣れない営業の仕事に就いた大介だが、絶望と焦燥で夫婦の時計は少しずつ狂い始め、いつしか大介には女ができていた……。1999年。大介はリストラされ、女も離れていった。落ち込む大介をサキが笑顔で包み込む。しかし就活が上手く行かず、酔い潰れて帰宅した大介が見たものは、脳梗塞で倒れているサキであった。この日は大介の誕生日。失語症と重度の記憶障害を患ったまま寝たきりの生活を強いられるサキを家に連れ帰った大介は、彼女のために結婚式を挙げることを思いつく。7万円のウェディングベールを買うため、身を粉にして働く大介。そして2000年1月1日。二人の結婚記念日がやってきた……。