美しい緑豊かな山村。船頭のトイチ(柄本明)は、川辺の質素な小屋に一人で住み、村と町を繋ぐための河の渡しを生業にしている。様々な事情を持つ人たちが渡し舟に乗ってくる日々。トイチを慕う村人の源三(村上虹郎)が遊びに来るとき以外、黙々と舟を漕ぐトイチは慎ましく静かな生活を送っていた。だがこんな山奥の村にも、文明開化の波が押し寄せてくる。川上では煉瓦造りの大きな橋が建設され、村人たちは、橋さえできれば村と町の行き来は容易になると完成を心待ちにしているがトイチは内心、複雑な思いでその様子を見守っていた。そんなある日、トイチの舟に何かがぶつかる。流れて来たのは一人の少女(川島鈴遥)だった。トイチは少しの間その子の様子を見てやることにするが、それと同じ頃、トイチは渡し舟の客から奇妙な惨殺事件の噂を耳にする。少女の存在はトイチの孤独を埋めていくが、その一方でトイチの人生を大きく狂わせ始める……。