天国と地獄

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天国と地獄

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レビューの数

146

平均評点

85.5(810人)

観たひと

1253

観たいひと

145

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル サスペンス・ミステリー
製作国 日本
製作年 1963
公開年月日 1963/3/1
上映時間 143分
製作会社 東宝=黒澤プロダクション
配給 東宝
レイティング 一般映画
カラー モノクロ/シネスコ
アスペクト比 シネマ・スコープ(1:2.35)
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声 4chステレオ

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督黒澤明 
脚色小国英雄 
菊島隆三 
久板栄二郎 
黒澤明 
原作エド・マクベイン 
製作田中友幸 
菊島隆三 
撮影中井朝一 
斎藤孝雄 
美術村木与四郎 
小道具野島秋雄 
音楽佐藤勝 
録音矢野口文雄 
整音下永尚 
音響効果三縄一郎 
照明森弘充 
衣裳鈴木身幸 
製作担当者根津博 
チーフ助監督森谷司郎 
記録野上照代 
スチル副田正男 
特殊機械大隅銀造 
撮影助手原一民 
編集助手兼子玲子 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演三船敏郎 権藤金吾
香川京子 権藤伶子
江木俊夫 権藤純
佐田豊 青木
島津雅彦 青木進一
仲代達矢 戸倉警部
石山健二郎 田口部長刑事
木村功 荒井刑事
加藤武 中尾刑事
三橋達也 河西
伊藤雄之助 馬場専務
中村伸郎 石丸重役
田崎潤 神谷重役
志村喬 捜査本部長
藤田進 捜査一課長
土屋嘉男 村田刑事
三井弘次 新聞記者A
千秋実 新聞記者B
北村和夫 新聞記者C
東野英治郎 年配の工員
藤原釜足 病院の火夫
沢村いき雄 横浜駅の乗務員
山崎努 竹内銀次郎
山茶花究 債権者A
西村晃 債権者B
清水将夫 刑務所長
清水耕次 魚市場の事務員
熊倉一雄 魚市場の事務員(声)
清水元 内科医長
名古屋章 山本刑事
浜村純 債権者
織田政雄 税務署執行吏
西村晃 債権者
田島義文 看守長
宇南山宏 島田刑事
牧野義介 高橋刑事
近藤準 刑事
鈴木智 小池刑事
大村千吉 病院の外来患者
加藤和夫 鑑識課員
菅井きん 麻薬患者
富田恵子 麻薬患者・殺される女
小野田功 麻薬患者
田口精一 中村刑事
松下猛夫 税務署執行吏
山本清 上野刑事
伊藤実 刑事
鈴木治夫 刑事
大滝秀治 新聞記者

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

エド・マクベイン原作“キングの身代金”を「椿三十郎」の小国英雄、菊島隆三、久板栄二郎、黒澤明が共同で脚色、黒澤明が監督した刑事もの。撮影は「娘と私」の中井朝一と「ニッポン無責任時代」の斎藤孝雄。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

ナショナル・シューズの権藤専務は、大変な事件に巻込まれてしまった。明日まで五千万円を大阪に送らないと、次期総会で立場が危くなるというのに、息子の純と間違えて運転手の息子進一を連れていってしまった誘拐犯人から、三千万円をよこさないと進一を殺すという電話があったからだ。苦境に立った権藤は結局金を出すことになった。権藤邸に張りこんだ戸倉警部達は権藤の立場を知って犯人に憎しみを持った。金を渡す場所。それは、明日の第二こだまに乗れということだった。犯人は戸倉警部達を嘲笑するかのごとく、巧みに金を奪って逃げた。進一は無事にもどった。権藤は会社を追われ、債権者が殺到した。青木は進一の書いた絵から、監禁された場所を江の島附近と知って、進一を車に乗せて江の島へ毎日でかけていった。田口部長と荒井刑事は、犯人が乗り捨てた盗難車から、やはり江の島の魚市場附近という鑑識の報告から江の島にとんだ。そこで青木と合流した二人は、進一の言葉から、ついにその場所を探り出した。その家には男と女が死んでいた。麻薬によるショック死だ。一方、戸倉警部は、ある病院の焼却煙突から牡丹色の煙があがるのをみて現場に急行した。金を入れた鞄には、水に沈めた場合と、燃やした場合の特殊装置がなされていたのだ。燃やすと牡丹色の煙が出る。その鞄を燃やした男はインターンの竹内銀次郎とわかった。また共犯者男女ともかつてこの病院で診察をうけており、そのカルテは竹内が書いていた。今竹内をあげても、共犯者殺人の証拠はむずかしい。戸倉警部は、二人の男女が持っていた二百五十万の札が、藤沢方面に現われたと新聞に発表する一方、竹内には、二人が死んでいた部屋の便箋の一番上の一枚に、ボールペンで書きなぐった後を復元した、「ヤクをくれヤクをくれなければ……」という手紙を巧妙に渡して、腰越の家に罠を張って待った。そして、竹内には十人からの刑事が尾行についた。竹内は横浜で麻薬を買った。肺水腫に犯された二人が麻薬純度九〇%のヘロインをうって死なないはずがない。竹内はそのヘロインを今度は、伊勢崎町の麻薬中毒者にあたえてためそうというのである。果して一グラム包〇・三%を常用している中毒者は忽ちにしてショック死した。彼は薬の効果を確かめてから、二人の男女中毒者をおいておいた腰越の別荘に走った。そこには、すでに戸倉警部の一行が、ずっとアミを張って待っているのだ。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2017年11月上旬特別号

野上照代に訊く黒澤映画 「天国と地獄」後篇:インタビュー 野上照代

2007年11月上旬特別号

見逃してはいけない@スカパー!:『露木茂の「ニュース映画で見る昭和」』「天国と地獄」「縛り首の木」

1983年11月上旬号

特別企画 [黒澤明の全貌]によせて 第1回 私の黒澤映画:「天国と地獄」

1963年4月上旬春の特別号

日本映画批評:天国と地獄

日本映画紹介:天国と地獄

1963年3月下旬号

「天国と地獄」・黒沢明の世界:

1963年3月上旬増大号

2大シナリオ特集:天国と地獄 黒沢明監督(東宝映画)

1962年12月上旬号

新作グラビア:天国と地獄

1962年11月上旬号

秋の日本映画の大作探訪:「天国と地獄」と黒沢明

1962年9月上旬号

旬報万年筆:黒沢映画「天国と地獄」スタート

2024/03/14

2024/04/03

80点

購入/DVD 


デカとホシ

ネタバレ

横浜の警部が、大手シューズメーカーの常務※を脅して身代金を奪った幼児誘拐犯を追う。
犯人はシューズメーカーの常務の子どもを誘拐するつもりが、誤って運転手の子どもをさらってしまう。一度は犯人からの連絡に驚いた常務だが人違いと分かって安堵するものの、犯人は身代金を要求し続ける。「運転手の子どもであっても身代金を出すのはお前だ」と。
冒頭から40分ほどは、高台にある常務の邸宅の応接間で繰り広げられる。最初は会社の乗っ取りを謀る重役たちからの説得、続いて誘拐犯からの連絡、警察の到着、犯人とのやり取り…。場所は変わらないのにすさまじい緊張感だ。続いて有名な特急列車を使った身代金受け渡しの場面が続き、緊張感はさらに大きくなる。
冒頭から特急列車を使った身代金受け渡しまでのスリルはほかの作品ではそう簡単にお目にかかれない。何度も見ているのにどんどん引き込まれていく。後半はまんまと大金を手にした犯人憎しで追い詰めていくサスペンスの高まりに乗せられてさらに引きずり込まれていく。
後半は犯人と目星のついた男を泳がせて犯行の証拠をつかもうとする。いわばのちのコロンボ方式なのだけれど、予期せぬ行動を取る犯人に翻弄される警察がたまに笑わせてくれたり、逆に真意が読めず緊張感が増したりと前半以上に画面から目が離せなくなる。
警察ものでこれ以上面白い作品ってあったかな… と思うほど久しぶりに警察/犯罪ドラマを楽しんだ。
ところで、刑事たちが自分たちを“デカ”、犯人を“ホシ”と呼ぶのだが、デカとかホシとかというのはてっきり後年の刑事ドラマ「太陽にほえろ!」で定着した言葉だと思っていた(チコちゃんでそんなふうに紹介されていたような)が、すでにこの作品の頃(1963年)に一般的な業界用語だったらしい。

※三船敏郎が演じるシューズメーカーの重役を「専務」としているサイトがKINENOTEも含めて多々ありますが、作品の中で「工場担当の常務」とセリフで出てきます。

2023/11/04

2023/11/17

94点

VOD 


名作中の名作

日本のサスペンス映画の金字塔と言える作品。
淡々と進むストーリーではあるが、徐々に犯人を追い詰めていく展開にグイグイ引き込まれる。三船敏郎の存在感、仲代達矢のキレ、三橋達也の薄っぺらさ、そして山崎努の狡猾さ。豪華俳優陣の競演に目を見張る。

丁寧に且つ細部にまで気を配った演出は、黒沢監督の真骨頂である。

2012/02/18

2023/10/15

80点

選択しない 


鞄の厚みは七糎

 黒澤明監督作品「天国と地獄」(1963)であります。エド・マクベインの小説『キングの身代金』を原作とし、脚本は黒澤明・菊島隆三・久板栄二郎・小国英雄の四名が担当。音楽は佐藤勝。

 製靴会社「ナショナル・シューズ」の常務・権藤(三船敏郎)は、価格が高くなつても品質の良い靴を作る事を最優先させる仕事人。しかし売上の不振を理由に、安い靴を多量に売りたい他の重役連・神谷(田崎潤)、石丸(中村伸郎)、馬場(伊藤雄之助)らとは意見の対立が激しくなつてゐます。
 権藤には成算があつて、密かに自社株を買ひ占め実権を握らうとしてゐました。その資金5000万円の小切手を大阪へ届ける為、秘書の河西(三橋達也)を派遣せんとします。

 ところがそんな権藤の元へ、息子の純(江木俊夫)を誘拐し身代金3000万円を要求する電話がかかつてきました。実は犯人は間違へて、権藤のお抱へ運転手の青木(佐田豊)の息子・進一(島津雅彦)を誘拐したのですが、構はず権藤にカネを求めます。これで河西の大阪行きは頓挫。

 百貨店・高島屋の配送トラックに偽装した警察の車が早速到着し、戸倉警部(仲代達矢)以下、田口部長刑事(石山健二郎)、荒井刑事(木村功)、中尾刑事(加藤武)が権藤家に詰めます。犯人からの要求は、現金3000万円を幅七糎の鞄二つに詰めて用意しろといふもの。権藤は当初、ここで3000万円を出すと株の買占め資金がなくなり、会社を追はれて総てを失ふので身代金の支払ひを拒否します。しかし河西の哀願、妻伶子(香川京子)の説得もあり最終的に承諾するのです。

 犯人は電話で、カネを持つて下り特急「第二こだま」に乗れ、と指示します。権藤に加へ戸倉ら警察側も密かに「こだま」に乗り込みますが、更に指示が飛び、酒匂川の鉄橋が過ぎたら鞄を車外に落せといふ。特急は固定窓で開きませんが、洗面所に七糎だけ開く小窓があり、其処から投げろと。要求通りにすると進一は約束通り返してくれましたが、犯人は捕まらずカネは持つていかれるといふ事態に。このあとは、戸倉たちの執念の犯人捜査が始まるのです......

 一応総ての黒澤監督作品は観てゐますが、わたくしは余り良い黒澤映画の鑑賞者ではございません。「用心棒」なんかは好きですけど、現代劇ではこの「天国と地獄」が一番好きかな。誘拐捜査と報道に就いて影響を与へた社会派作品であるけれど、単純にサスペンスものとして眞に見応へがあります。

 身代金受け渡しの道具に使はれたのは当時の国鉄のエース、初の電車特急となつた151系「こだま」。それまで電車と言へば都市内交通(地下鉄や国電、路面電車など)に限定で、長距離を走る特急にはやはり機関車が客車を牽引するものが充当されてゐました。その常識を打ち破り、それまで東京大阪間を最速の「つばめ」でも8時間30分かかつてゐたのを、一気に6時間30分まで縮めた画期的な電車特急でした。
 
 配役陣は豪華で、上記以外でも警察関係を中心に志村喬・藤田進・土屋嘉男・名古屋章、マスコミに千秋実・三井弘次・北村和夫らで大滝秀治や梅野泰靖がノンクレジットと云ふのも凄い。

 その他ワンシーンのみで西村晃や山茶花究、三船を慕ふ老工員に東野英治郎、火夫に藤原釜足(煙突から出る桃色の煙!)、江ノ電を熱く語る沢村いき雄など忘れ難いですな。個人的にはこだまのビュッフェで、糞面白くもない顔で過す渋谷英男が気になりました。本多猪四郎作品なら彼はやはりマスコミ関係でせう。そしてこの役は勝部義夫で決まり。

 前半は三船が主役で、企業内ミステリかと思はせる序盤。三橋達也が案外小者感を出して情けない役。それが誘拐事件が発生し後半は仲代達矢の犯人に対する怒りからの執念の捜査が繰り広げられます。中盤以降、犯人が完全に断定されて以降が少し中弛み感あり。犯人山崎努の、三船に対する憎しみの動機がイマイチ伝はらないし。

 確かに木村功も言つてゐたやうに、丘の上に御殿がデンと聳えてゐれば、何だお高くとまりやがつて、と云ふ心持にはなるでせうが、誘拐までするか喃......尚、山崎努のラストはあんな演技ではなく、あくまでも人間離れした冷徹さを貫いて頂きたかつたと存じます。観客が最後まで憎憎しいと思ふくらゐが丁度いいのです。

2023/08/13

2023/08/13

90点

VOD/Amazonプライム・ビデオ/レンタル/テレビ 


誘拐犯の動機がなんだ? 真剣に戦う常務と刑事たちが熱い

ナショナルシューズの権藤常務の息子が誘拐、と思いきや、一緒に遊んでた運転手の子供だった。それでも執拗な誘拐犯はそれを利用、身代金を手にするため企む。権藤常務は自身の将来に投資する金が必要で身代金の余裕はないが…のところはまだ序盤。
犯人逮捕へ向けての警察や関係者、常務の矜持、1960年代の日本の繁栄と不安、などなど感銘受ける。終盤は雰囲気も変わる。
しかし、ラストはちょっと意外、これで犯人の心情を読め、と?

2023/01/05

2023/01/05

85点

購入/DVD 


どこまでも丁寧に丹念に描かれた見事な映画。犯人の悪行を徹底して描くさまはすさまじい。日本の刑事ものはどうしても犯人の素性や過去にとらわれ過ぎてしまいには犯罪もやむなしと浪花節長に流されていくがここでは恐ろしい犯罪の容赦ない追及がメイン。事件をめぐる人間ドラマが面白い。

2022/08/31

2022/08/31

74点

レンタル/東京都/TSUTAYA/SHIBUYA TSUTAYA/DVD 


喰い入ってしまうようなカットの数々・・・

 これは確かに凄いと思った。迫真の室内劇、警察による地道な捜査、特急こだまでの大胆なロケーション、麻薬中毒者に溢れたスラム街の生々しさ…思わず食い入ってしまうようなカットの数々は見事なものだ。経営の実権を手に入れるための争いからいきなり誘拐事件が起きるというスピーディかつ柔軟な展開も凄い。
 ただこれだけ興奮するような要素が詰まっておきながら、誘拐犯・山崎努逮捕までの経路は意外と呆気ない。それに途中から作品が描こうとしたものが結局何だったのか、会社組織の腐敗なのか、金銭に執着する人間の愚かさや弱さなのか、事件に巻き込まれた者の心理なのか、ホシを追う警察の正義感なのか、段々曖昧になって行くのを感じずにはいられなかった。終盤の三船敏郎・山崎努の面談はもっとじっくり観たかったところ(務所である都合上、時間が限られているのは仕方ないが)。黒澤作品は今日でもやたら評判は良いが、冷静に考えてみれば殊更取り上げるほどでもないと思う(もっとも作品の価値は認めるが)。