テキサスの小さな田舎町を舞台に、1951年当時の青春群像を
閉塞感に充ちた乾いた描写で巧みに表現しています。
「ペーパームーン」同様、この監督はモノクロでの表現が巧いですねえ。
一つの時代の終焉を田舎町の窮屈で閉鎖的な人間関係と重ね合わせて描いて
いるんですけれども、退廃的な場面が多いわけですから、普通であれば息苦しく
なってしまうところを、当時流行したヒット曲を有効的に使って、郷愁を呼び起こし
ながら、ほんのちょっぴりですが、明るい明日も見えるようにしているんで最後まで
感傷的な気分になりながらも、余裕を持って心地よい余韻を持って鑑賞することが
できました。こういう悶々とした青春物語も味があっていいと思います。
街にたったひとつのロイヤル映画館は高校生のソニー(ティモシー・ボトムズ)と
親友デュアン(ジェフ・ブリッジス)には打ってつけのデート場所。この日もそれぞれの
カップルでデートするんですが、映画館を出た後でソニーは、最後まで迫ろうとして
あっさりと拒絶されてしまい別れる羽目に。
一方、デュアンとジェイシー(シビル・シェパード)もうまくいっているようなんですが、
町一番の美人ジェイシーはデュアンよりも、いい男を見つけようとあちらこちらに
目移り。ある日、ソニーはふとしたことからフットボールコーチの妻ルース
(クロリス・リーチマン)と不倫関係に陥ってしまいます。
そんな折、ソニーに色目を使い出したジェイシー。そのことを知ったデュアンは
ソニーを殴り倒して仲違いしてしまうんですが、あるとき、町を出て兵隊として
朝鮮戦争へ行くことになったデュアンのもとにソニーが訪れると、自然といつものように
親友の会話になります。
二人は閉館が決まったロイヤル劇場の最後の上映、そうラストショーを見に出かけます。
ラストショーは「赤い河」 ジョン・ウェイン主演の西部劇が寂しくエンディングを迎えます。
この作品の見所の一つは絶妙のキャスティングだと思うんです。ソニー役の
ティモシー・ボトムズは「ジョニーは戦場へ行った」のまま、普通の青年を普通に
演じていますし、デュアン約のジェフ・ブリッジスもやり場のないエネルギーを
どうすることもできず、悶々と日々を過ごすという青年によくありがちな心情を自然に
表現しています。
ジェイシー役、シビル・シェパードはタクシードライバーで魅せたセクシーな秘書役が
印象に残りますがここでは、大人になる前の微妙な時間を可憐な雰囲気で瑞々しく
演じてくれています。
脇を固めるベン・ジョンソンの相変わらずの存在感は、作品全体に重石のように
効いています。
決して華やかさはないのですが、田舎の高校生が経験するちょっぴり大人びた青春の
日々に少なからずシンパシーを覚え、わたしなど中年の身にとっては過ぎ去りし日に
経験した淡く仄かな恋心を想いださせてくれる懐かしい匂いのする秀作であると思います。