青春ジャック  止められるか、俺たちを2

せいしゅんじゃっくとめられるかおれたちをつー|----|----

青春ジャック  止められるか、俺たちを2

レビューの数

35

平均評点

80.2(139人)

観たひと

188

観たいひと

25

(C)若松プロダクション

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ヒューマン / ドラマ
製作国 日本
製作年 2023
公開年月日 2024/3/15
上映時間 119分
製作会社 若松プロダクション=シネマスコーレ(製作プロダクション:ドッグシュガー)
配給 若松プロダクション
レイティング 一般映画
カラー カラービスタ
アスペクト比 アメリカンビスタ(1:1.85)
上映フォーマット デジタル
メディアタイプ ビデオ 他
音声 5.1ch

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督井上淳一 
脚本井上淳一 
企画木全純治 
尾崎宗子 
井上淳一 
プロデューサー片嶋一貴 
木全純治 
撮影蔦井孝洋 
美術原田恭明 
装飾寺尾淳 
鈴木沙季 
音楽宮田岳 
録音臼井勝 
音響効果勝亦さくら 
照明石田健司 
編集蛭田智子 
ヘアメイク清水美穂 
製作担当伊藤成人 
助監督小原直樹 
演出応援村谷嘉則 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

場面 ▼ もっと見る▲ 閉じる

予告編 ▲ 閉じる▼ もっと見る

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1969年を舞台に若松孝二監督が設立した若松プロダクションを描いた青春群像劇「止められるか、俺たちを」の続編。1980年代、ビデオが普及し始め映画館から人が遠のきだす中、それに逆行するように若松孝二は名古屋にシネマスコーレというミニシアターを作る。熱くなることが恰好悪いと思われていた1980年代を背景に、映画と映画館に吸い寄せられた若者たちの青春を描く。若松孝二監督に師事し、若松プロダクションにて助監督を務め、「戦争と一人の女」やドキュメンタリー「誰がために憲法はある」などを監督、「男たちの大和」「止められるか、俺たちを」など数々の作品の脚本を手がけてきた井上淳一が、本作の企画・脚本・監督を務める。若松孝二を前作から引き続き井浦新が、シネマスコーレの支配人に据えられる木全純治を「天上の花」の東出昌大が演じる。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

1980年代。熱くなることを恰好悪いとするシラケ世代が台頭し、ビデオの普及に伴い映画館から人々の足が遠のき始めていた。そんな流れから逆行するように、若松孝二は名古屋にミニシアター、シネマスコーレを作る。そして、結婚を機に東京の文芸坐を辞め、地元・名古屋でビデオカメラのセールスマンをやっていた木全純治を支配人に抜擢。若松に振り回されながらも、木全は持ち前の明るさで経済的な危機を乗り越えていった。そしてそこには、若者たちが吸い寄せられていった。まだ女性監督のほとんどいない中、金本法子は自分には撮りたいものなんか何もないと言いながらも映画から離れられない。映画監督になりたい一心で若松プロの門を叩いた井上淳一は、己の才能の無さを痛感しながらも、映画を諦めきれない。これからこれから、と木全が度々口にする言葉は、周囲を救った。涙も笑いも絶望も希望も、そこにはあった。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2024年4月号

REVIEW 日本映画&外国映画:「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」

2024年3月号

巻頭特集 「映画俳優ってなんだろう」を考えてみる。:PART1 映画俳優をめぐることば 俳優が語る 井上淳一「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」

2024年2月号

巻頭特集 2024年映画の旅:Chapter2 期待作をつくった人たちにきく インタビュー 東出昌大「WILL」「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」

2024/07/31

2024/08/03

90点

映画館/東京都/キネカ大森 


自分のこととして感じることができた

前作を踏襲しつつ、10年後の若松プロを描く。前作と引き続く登場人物は若松監督(井浦新)のみで、舞台は名古屋の映画館シネマスコーレとなる。
映画館を買い取った若松。館主となった木全(東出昌大)とアルバイト館員の女(芋生悠)に絡むのが映画監督志望の若者・井上(杉田雷麟)、本作監督本人で主役である。
映画監督に憧れて若松プロに入った井上だが、仕事ができず怒鳴られ、初監督の現場でもプロデューサーである若松に仕事を奪われてしまう。そんなダメな自分を描く井上淳一監督。
アルバイト館員の女だけは架空だそうだが、彼女の存在が映画に艶を与えるのに成功している。
前作は遠い時代の伝説を見るような感じだったが、本作は監督自身を描いたことで広がりができて自分のこととして感じることができた。

2024/07/27

2024/07/28

95点

映画館/東京都/キネカ大森 


観ている間、ずっと楽しい

ネタバレ

1作目も好きだが、自分がまだ生まれる前の話のため、圧倒はされたが同化する感覚は無かった。
本作は出てくるワードが大林とかロッキーとか親しみのある時代で、自分自身1浪して映画も時々見ていたので、相当のめり込んだ。
映画愛と生きる葛藤、そして実在する人物の物まねぶりは「全裸監督」を観る楽しさと似ていた。映画館でどっぷり浸って観ることが出来て幸せな時間だった。アマゾンプライム等を待たず、熱いなか足を運んで本当に良かった。

2024/05/23

2024/07/11

85点

映画館/群馬県/シネマまえばし 


半端ない熱量

その熱量を持って映画作りに望んでいた若松監督。
ずっと尖った映画を生み出し続けていたからこそ
閉塞感に息苦しさを感じる若者たちが次々と若松監督の門をたたく。
自分の映画を上映したいと映画館を作るその情熱が
関わる皆に伝播していく。

映画監督が夢の学生は怒られてばかり。
今じゃパワハラに取られてしまいかねないけれど
若松さんが若松監督になると、突如目の前の撮影現場の彩が変わってしまう。
彼が思い描いた絵コンテでは到底成しえない画を生み出してしまう。

映画監督にという夢が、いつしか違う道へ繋がっていく。
作品は杉田雷麟さん演じる若者が夢へと飛び込んでいく中で
映画作りは簡単じゃない事を知り
自分にできる事は何かと自身を見つめ直す成長の物語なんだろう。
脚本家の井上淳一さんの投影だとするこのキャラクター。
杉田さんの演技を通じて井上さんご自身の見て感じた事を表現したのでしょう。

そして東出昌大さんが演じた支配人の木全さん。
若松監督とはまた違ってエネルギッシュな方なんだなと思いました。
映画が斜陽な時代であり、Vシネマが少し先に誕生しようという時に
映画館を維持して、お客さんに来てもらう。
この難しさに真正面から取り組んだんですね。
ピンク映画から大手から外れた小規模作品へ。
ミニシアターの黎明期を支えた木全さんの半生のようなお話でもありました。

そして芋生悠さんが演じた女性…
彼女が一番胸中に抱え込んだものがあった事を
物語が進んだ先で魅せつけられました。
『人間としてのやさしさをみんなが持てば平和な世界になる』
と若松監督は映画キャタピラーの舞台挨拶でおっしゃいましたが
彼女のような人たちが安心や安全を感じられる事こそが平和な世界の第一歩なのかもしれません。

『火薬を使わない戦争映画で、いつか銃後を撮りたいと考えていた。
連合赤軍を撮った時に、この子達の背景には親世代の戦争の過ちがあったのだろうと感じた。
正義の戦争はない。戦争は人を殺す。相手も死ぬ、自分も死ぬ。
ベトナム、イラク、何度も同じ過ちを繰り返している。
1982年ベイルートに行ったとき、キャンプの大虐殺があった。
女性と子どもの死体の山、腐臭を漂わせ、恨みの顔で亡くなっている。
戦争で女性と子どもが犠牲になる。
戦争のない平和な世界にしてほしい。
人間としてのやさしさをみんなが持てば平和な世界になる』

こんな思いを抱いていた若松監督が
当時の、学生運動が完全に下火になった頃の
行き場のない情熱を持った若者たちの指針になったのでしょう。
彼らの青春をジャックして
止められるか、俺たちをと叫んでみせたアツイ作品。

2024/04/02

2024/05/16

70点

映画館/宮城県/フォーラム仙台 


パワフルな木全さん

 若松孝二監督の若き日の監督人生を描いた2018年の「止められるか、俺たちを」の続編。若松監督が名古屋に作った劇場シネマスコーレのお話。文芸座で働いていたが結婚を機に故郷の名古屋に戻りビデオカメラのセールスマンをしていた木全純治を説得し支配人に据える。独自プログラムでは赤字となりピンク映画を上映するようになったりするがなんとか経済的危機を乗り越えていく。一方自分で取りたいものが何なのかわからないまま映画から離れられない金本法子や、映画監督になりたい思いが強い井上淳一など、映画好きの若者が集っていた。井上は若松に直談判し進学とともに上京し若松プロへ入社するがドジばかり踏んでいた。そんな井上に若松プロに舞い込んだ河合塾のプロモーションを監督させるが、実情は若松監督がかなり口を出したようだった。そんな映画の上映会で井上を監督として紹介する若松だった。
 シネマスコーレの誕生物語でした。東京は高いので名古屋に作ったという若松監督の言い分はまあ正しかったかな。宮城県出身なんだから仙台に作ればよかったのにって思ったけど、仙台ではなかなか映画館の維持は困難だったかもしれない。名古屋は大阪からもそう遠くないし人口も多く独自の文化圏を形成しているからなあ。井浦新には若松孝二が乗り移っているようだった。東出昌大演じた木全さんは、しばしばメディアでお見掛けするパワフルな印象とはずいぶん違っていたけど、若松監督と渡り合い交渉し自分の主張を貫くあたりはその通りなのかもしれない。井上監督は自虐的に自分のことを描いていたんだろうか。金本法子が今どうしているのかはわからないのですが、女で在日でという背景はあの当時は結構つらかったのでしょう。それでも不機嫌な顔であっても映画にしがみつく姿はなんか惹かれました。ピンク映画やロマンポルノからたくさん監督が排出された時代を思い出しました。

2024/04/30

2024/04/30

80点

映画館/石川県/シネモンド 


今作も前作と同様に劇場支配人、映画人を目指す劇場アルバイトの女の子、映画監督を目指す学生といった若松孝二監督のもとに集まった人たちの群像劇が描かれる。前作の背景は70年代で監督含め皆若くギラギラした感じを白石監督が見事に切り撮っていたが、今作は80年代ということで時代性も差別化されていて当時の社会の空気感がちゃんと描かれていたように思う。また、各キャラの立ち位置も明確で映画に対する熱い想いが伝わるドラマも良かった。
それにしても井浦新の若松監督は今回も素晴らしい。

2024/04/28

2024/04/29

80点

映画館/福岡県/KBCシネマ 


映画の学校を作った男

名古屋にあるミニシアター、「シネマスコーレ」誕生の背景にこんな秘話があったとは驚いた。一昔前の映画界では映画監督になるにはサラリーマン的な助監督を経験することが必須だったが、若松プロに行けば給料は貰えないが4年で監督になれたそうだ。これって映画学校に行くよりはるかに確実で効率的ではないか。

前作に引き続いて本作もまた映画の魅力に取り憑かれた老若男女たちによる映画賛歌満載の作品だった。作る側を目指していたものの結婚を機に上映する側になった男を東出昌大が好演。夢破れた悲劇の男ではなく映画と自分なりに向き合う方法を見つけられた幸運な男として描かれていた。大学の映研出身者の女(芋生悠)はシネマスコーレでモギリをしつつ映画作りの夢を追いかけている人物。在日韓国人故に当時の法律では16歳になると指紋登録が必要だったがそれを拒否すると明言。このあたりはサラリと描かれただけだった。

本作を牽引したのは予備校生にもかかわらず映画三昧の日々を送る浪人生だろう。彼のモデルは本作を監督した井上淳一。見た限り才能のある人間には見えなかったが若松孝二という名伯楽に出会えたことが彼の人生を映画界の深部へと導くことになる。“俺の視界に入るな”と怒鳴られながら撮影現場で右往左往する井上の姿は印象的だった。

河合塾の一年を紹介するPR映画で井上は監督デビューを果たす。このときの撮影風景が実に面白かった。中でも赤塚不二夫扮する郵便配達が誤配するエピソードが最高。エンドロールでは本物のPR映画も紹介されて大満足。ラストで満席になった追悼上映の会場にふらりと亡き若松孝二が立ち寄る場面まで、映画愛に溢れた傑作でした。