比嘉常雄は沖縄から集団就職で上京し、小さな製本会社に勤めたが一年も続かず、今は子供の頃からの親友で大学へ通う石垣悟の下宿に居候の身だ。しかし、日雇いで稼ぎながらシナリオ学校に通う生活は満足のできるものではない。常雄の実家は米軍キャンプの周辺で売春バーをやっており、戦争で片腕を失った父に代わって、母が一人で店を仕切っていた。毎夜、酒を浴び娼婦を抱く米兵の喧騒は小学生の常雄には耐えられない。そんな彼の楽しみは映画だった。ある日、住み込みで働くことになった洋子と真理子の姉妹が宮古島からやって来た。真理子は常雄より年上だが二人は仲のよい兄弟のようになっていった。常雄が6年生の時、米軍のジェット機が小学校に突っ込んで、教室は燃え上がり悟は耳をやられた。また、中学生の頃、常雄を見守ってくれていた祖母のモウシが米軍のジープに轢き殺された。洋子が米兵のハニーとなりアメリカへ旅立ち、残された真理子は自ら娼婦となった。沖縄での思い出は常雄にとって辛く暗いものばかりだが、東京で生活していると幾度となく思い出される。映画の職を求める常雄は、合理化、再編成の映画界で仕事を見つけるのは不可能だという現実の厳しさを知った。ある日、悟は就職内定の会社から耳が不自由なこと、学生運動に関わっていたことなどの理由で内定取消しの通知を受ける。さらに、沖縄出身ということでパスポートの必要な外国人という対遇をうけた。常雄は映画の夢を棄てかけ、残飯あさりの毎日を送っていた。そんな時、本土復帰間際の沖縄で娼婦を続けられなくなった真理子が、姉のいるアメリカへ行く前に常雄に会いに来た。常雄は真理子がいとおしく、初めて彼女を抱いた。悟の下宿に戻った常雄は、悟がバイクで国会議事堂に突っ込んで死んだことを知らされる。そして、悟の子を身篭っている絹子と一緒に、常雄は沖縄へ帰る船から悟の骨を海へ沈めていった。沖縄の言い伝えで、親より先に死んだ者は先祖の墓に入ることはできないのだ。常雄の胸はもう一度東京へ戻って夢を果たしてやろうという思いで熱かった。