中堅の推理作家、越路玄一郎は46歳。離婚して以来、独身生活の不自由さはあるが、何かと煩わしい男女交際をするのが歳のせいか臆劫になっていた。ある日、彼は友人の売れっ子カメラマン、白井完介に誘われてソープランドへ行った。そこで、赤城という源氏名のホステス、岡野景子と出会う。彼女は韓国生まれで、6年前日本人、岡野忠司と結婚して日本にやって来たのだが、たどたどしい日本語を話しながらも、明るく気立てのよい女性だった。互いに身の上話をしているうち、景子は越路にひと目惚れしたと告げる。その夜以来、越路の頭の中から景子のことが離れない。数日後、店を訪ねた越路は、景子の想いが一層募っているのに驚いた。彼女は越路のことを考えると仕事もできなくなると言う。そして、忠司と離婚するとまで言いだした。景子の思いに狼狽しながらも、越路はある感動を覚えていた。だが、二度逢っただけで離婚は乱暴だと押し止め、再び逢いに来る約束をして店を出た。ある夜越路のもとに景子から電話が入る。我慢できず、越路に対する想いを忠司に話してしまったという。電話に出た忠司は、店以外で景子と逢うようなつき合いは止めてくれと釘を刺した。越路ももう逢わない方がいいと景子に告げた。10日後、景子はホテルにカンヅメになっている越路を訪ねて来た。だが、すれ違いで逢えない。深夜の2時までロビーで待ち続けた彼女は、戻って来ない越路にメモを残して去った。そんなある日、越路は行きつけのクラブで、友人の挿絵画家、村山から意外な話を聞く。村山は偶然景子に逢い、彼女の越路に対する想いのたけを聞かされたというのだ。数日後、景子と再会した越路はつき合っていくことを決意。その夜再び越路のもとへ景子から電話が入った。景子から離婚の話を聞いた忠司が怒り、彼女を殴りつけ、越路と直接話をしたいというのだ。そして、忠司が越路のマンションを訪ねて来た。忠司はもう自分の手におえない景子を越路に引き取って欲しいと告げた。