三浦元太は小学校六年生。父がインドネシヤで戦死したため、チンドン屋の三味線弾きやニコヨンをやっている母およしと二人で、十三軒長屋の屋根裏に住んでいる。貧しい生活にもめげず元太は明るく元気一杯だ。元太達は秋子先生の案内でユネスコ村へ写生に行った。元太は母にみせようと、父の戦死したインドネシヤの家を一心に描く優しい少年でもあった。級友久雄の犬が犬殺しに捕えられそうなのを見て、勇敢に犬殺しに向かっていったり、仲の良いひとみが腕白坊主にいじめられているのを助けたり、少年らしい正義感の持主でもあった。同じ家に住む江戸っ子肌の大工、尾沢おじさんとおばさん夫婦はそんな元太が可愛くてならず、何かとこの親子の世話をやいていた。秋子先生もこんな元太が大好きである。無理なニコヨン労働が続いておよしが病気になってしまった。そんな頃、親子討論会が開かれた。生徒からPTAへ、PTAから生徒へそれぞれの意見を述べる会であるが、元太は委員に選ばれてしまった。元太は腕っ節には自信があるがこういう席場での発言は大の苦手である。だが討論会は元太の勇気ある発言で俄然白熱化した。競輪ボス沖山後援会長が選挙にからんで長屋に住むお君さんをいじめたことを元太が暴露したからである。個人攻撃と怒った沖山は校長先生、秋子先生に喰ってかかった。秋子先生は今日の発言が全て子供達自身で考えた正しい意見であると主張した。だが、沖山には元太の発言には誰か黒幕があると思い、長屋におよしを訪ね彼女をせめた。およしはかつて沖山の世話になるという暗い過去があった。それから数日後修学旅行の日が来た。母が病床にあるため元太は旅行をあきらめ積立金を生活費に廻した。ひとみも旅行には行けなかった。二人は遊園地で一日を遊び廻り、二人だけの修学旅行と喜んだ。いつか夏が過ぎ、秋がやって来た。元太は八百米リレーの選手として、アンカーを受待った。リレーは元太の力走によって優勝した。その喜びを母に知らせようと一目散に我が家へ帰った元太は、母親およしの危篤状態を知った。「がんばれ母ちゃん、目をあけておくれよ母ちゃん」と元太の母を呼び戻す必死の叫びも空しく、母はおじさん、秋子先生に見守られて息をひきとった。元太はその通夜の晩失踪した。秋子先生は、元太の父がインドネシヤで戦死したことを思い、ユネスコ村のインドネシヤハウスに向かった。元太はこの家で思い切り泣いていた。元太は尾沢おじさん夫婦と暮すことになった。すっかり秋めいた並木道を、元太は元気一杯校門めがけて走っていくのだった。