名うてのハコ師と呼ばれた海藤は、今はアル中で右手が利かなくなり、同居人のレイの世話になっている初老のスリだ。ある日、愛人・芳江の息子である一樹が弟子入りを志願してきた。一樹に技を伝授することで、自らもカムバックを図る海藤は、自分のことを気にかけてくれる鈴子が主催する断酒会にも参加し、やがて勘を取り戻していく。だが、彼は彼に反発して家を飛び出し、今は集団スリのボスとなったレイの兄・アキラに右手を潰されてしまう。そんな海藤の元に、彼がスリを生業にしていることを知り酒を飲んでしまった鈴子が現れた。自分に秘かな想いを寄せていた鈴子の心情を知り、彼女を抱く海藤。しかし翌日、傷の痛みを押さえてスリに出かけた彼は、長年彼を追い続けてきた刑事・矢尾板に“仕事”を目撃されてしまう。