滋賀県の焼物の里、信楽町に暮らす陶芸家の夫婦に破局が訪れた。作風の違いなどから衝突を重ねていた夫の学(石黒賢)が、若い愛人と出奔。残された妻、神山清子(田中裕子)は、長女・久美子(遠山景織子)、長男・賢一(窪塚俊介)を、女手一つで育て上げると心に決め、そして陶芸家の意地から、長年の夢である独自の古代穴窯による信楽自然釉をなんとしても成功させたいと執念を燃やす。女の意地もあった。だが苦しい生活が続き、米びつの底は尽き、米のとぎ汁を飲んで飢えをしのぐような毎日。窯炊きの挑戦も失敗を繰り返し、何度も失意に打ちひしがれる。それでも、子供たちの成長と、なにかと後ろ盾になってくれる先輩陶芸家・石井(岸部一徳)の励ましに支えられて、なおも清子は挑戦を続ける。そして、数年のち。真っ黒な夜空に煙突から真っ赤な炎が吹き上げるほどに焚き続けた2週間が過ぎた窯出しの日。窯に入った清子の瞳に小さな光が反射する。窯の奥で、キラリと光るものがあった。花入れや壷、水指がビードロをつけ、可憐な色に染まっている。貧しさもいとわず、穴窯に賭けた清子の挑戦がついに報われた瞬間だった。清子は日本全国で個展も成功させ、女性陶芸家の先駆者として押しも押されぬ存在となる。月日は流れ、久美子は東京の短大に進学し、信楽を去る。賢一は窯業試験場を卒業し、母と同じ陶芸の道を歩み始める。みどり(池脇千鶴)という恋人もできるが、なぜか賢一の腰はすわらない。バイクに熱中するのはまだしも、パチンコに狂って陶芸修行もさぼりがち。「出て行け!」。清子の怒声が響く。そんななか、賢一が突然倒れた。医師の診断は白血病、HLAの適合する骨髄の移植が生存の唯一の道だが、家族はおろか清子の妹の幸子(石田えり)ら血縁者の骨髄は賢一に適合しない。清子は賢一の命をなんとしても救おうと、石井や賢一の友人たちの協力も得て、鬼のような形相で骨髄提供者探しに出奔し始めた。そんななか、女性陶芸家に憧れを抱く東京のOL、牛尼瑞香(黒沢あすか)が、清子に押しかけ弟子としてやってくる。一方、いっときの小康を得た賢一は、自宅療養のかたわら「生きていた証を残しておきたい」という思いから天目茶碗に挑戦し、めきめきと腕を上げていった。そして清子は、賢一との母子展を行う決意をする。