静かな漁村に暮らす高田剛一(高倉健)は、久々に東京に向かう。嫁の理恵(寺島しのぶ)が電話で、剛一の息子、健一(声:中井貴一)が重病で父親に会いたがっていると知らせてきたのだ。しかし、入院している健一は、長年にわたる確執から父親に会うことを拒んでいた。打ちひしがれ、病院をそっと抜け出す高田に、理恵はビデオテープを渡す。テープを再生した高田は、息子が千年以上にさかのぼる、宗教的儀式にまつわる演劇形態の研究をしていたことを知る。有名な俳優リー・ジャーミン(リー・ジャーミン)の舞踏を見るために、はるばる中国南部・雲南省まで向かった健一だったが、あいにくリーは病気のために歌を披露することができず、健一が翌年再び雲南省を訪れたら、『三国志』に由来する仮面劇『単騎、千里を走る。』を披露することを約束していたのだ。今となっては決して果たされない約束。高田は息子のやり残した仕事を成し遂げるために、リーの舞踏をビデオ・テープに撮ろうと単身、中国の麗江市へ旅立つ。手がかりは、舞踏家リー・ジャーミンという名前のみ。しかも高田の道案内をするチュー・リンは、おそろしく日本語がおぼつかない。遅々として進まない状況。言葉も分からないこともあって、苛立ちを隠しきれない高田は、やっとの思いでリーの元にたどり着くが、リーは生き別れになった息子ヤン・ヤンのことを思うと、『単騎、千里を走る。』を舞うことができないと言う。息子に一目会いたいと泣きながら懇願するリーに、高田はやむなくヤン・ヤンを迎えに行くことを決意する。