ある夏の日、作家・村尾菊治(豊川悦司)の仕事部屋。不倫関係にある村尾と人妻・入江冬香(寺島しのぶ)が愛し合っている。高まりの中で冬香は「本当に愛してるなら、私を殺して」と村尾に懇願した。その言葉に誘われるように冬香の首を絞めて殺してしまう村尾。自ら警察に連絡して逮捕された。村尾と冬香の出会いは前年の秋。取材で京都を訪れた村尾は、知人から自著の愛読者である冬香を紹介されたのだった。二人はすぐに慕い合うようになった。住む場所も離れ、お互いに家庭を持っている二人だったが、関係を結ぶようになるのは時間の問題だった。僅かな時間の逢瀬のために東京から京都へ新幹線で通う村尾。やがて夫の転勤によって、冬香が東京に越してきてからは、益々二人の不倫関係は燃え上がっていく。ある晩、情事の最中に冬香は「殺して」と村尾に懇願した。躊躇ってしまう村尾に「意気地なし」という冬香。そんなことがあってからしばらくして殺人は現実のものとなってしまったのだった。取調べの中では、女に頼まれて殺したという村尾の証言は「言い逃れ」と見なされてしまう。担当の女性検事・織部(長谷川京子)はどこか冬香の気持ちに共感を持ち始めていた。やがて裁判が始まり、冬香と夫の間が冷め切っていたことなどが明らかになっていく。そして事件直前に冬香を送り出した実母の証言。その時の冬香の様子はいつもと違っていたと言う。しかし結局これといった決め手の無いままに裁判は終わり、村尾は殺人罪で懲役8年の刑を宣告された。ある日、一人独房に佇む村尾の元に冬香の実母から郵便が送られてきた。中には冬香にあてて村尾がサインした村尾の著作、そして冬香からの手紙が入っていた。その手紙には、愛無き家庭生活を悲しみ、村尾との禁じられた愛の絶頂で命を絶ちたいという冬香の決意が綴られていた。それを読んだ村尾は冬香の強い意志を噛み締め「俺はやはり選ばれた殺人者だった」と呟くのだった。