現代。のどかな田園地帯に佇む7本の古い桐の木。土地の整備事業のため、役所の職員2人が伐採の許可を取りに向かった先は、老人ホーム。そこで待っていた高齢の女性サユリ(奈良岡朋子)は、時折朦朧とする意識の中、静かに力強く呟く。“あの木を切ってはならん……。あれは、おかあさんの木じゃ……。”そして彼女は、ある悲しい物語を語り始めた。今から100年ほど前。長野県の小さな田舎の村。若く美しい女性ミツ(鈴木京香)は、想いを寄せていた謙次郎(平岳大)と結婚。裕福とはいえない生活だったが、一郎、二郎、三郎、四郎、五郎と元気な男の子に恵まれ、幸せな日々を送っていた。6人目の男の子・誠だけは、請われて姉夫婦の元へ里子に出したものの、さらに末っ子の六郎が生まれ、家の中はいつも賑やか。ところが突然、謙次郎が心臓発作で急死。呆然とするミツを支えたのは、6人の息子たちだった。それから数年。逞しく成長した息子たちを、今度は戦争が奪ってゆく。まずは一郎(細山田隆人)、そして二郎(三浦貴大)……。“お国のため”という名目の下、息子たちを複雑な思いで送り出すミツは、彼らが出征してゆく度に1本ずつ桐の木を庭に植えてゆく。まるで木に息子たちの魂が宿っているかのように、優しく語りかけながら。そんなミツを気遣うのは、謙次郎の親友・昌平(田辺誠一)とその娘サユリ(志田未来)だった。だが昌平は郵便局員という立場上、ミツに息子たちの戦死を告げる辛い役回りも担当することになる。長い戦争が終わっても、7人の息子たちは誰一人として戦地から帰ってこなかった。それでもミツは7本の桐の木を大事に育てながら、いつか誰かは戻って来ると信じて待ち続けた。終戦翌年の冬。唯一、生死が確認できなかった五郎(石井貴就)が、傷だらけの姿で戻って来る。傷付いた足を引きずりながら、やっとの思いで帰り着いた五郎が、懐かしい我が家で見たものとは……。