舞台に映画にと役者として半世紀以上活躍し俳優養成所を主宰する往年のスター、桑畑兆吉(仲代達矢)。芝居をこよなく愛した彼も今や認知症の疑いがかかり、長女の由紀子(原田美枝子)とその夫であり兆吉の弟子だった行男(阿部寛)、さらに由紀子の愛人である運転手(小林薫)に遺書を書かされた挙句に高級老人ホームへ送られる。しかし兆吉は施設を脱走し、シルクのパジャマの上にコートを羽織った姿でスーツケースを引きずりながら海辺をあてもなくさまよい歩く。すると、妻以外の女に産ませた娘・伸子(黒木華)と突然再会。兆吉は私生児を産んだ伸子を許せず、家から追い出していた。そんな伸子に、シェイクスピア作の悲劇『リア王』に登場するリアの末娘・コーディーリアを重ねる兆吉。『リア王』の狂気が乗り移りかつての記憶が溢れ出す兆吉の心に、人生最後の輝きが宿る。