東日本大震災を機に、広島県に住む叔母・広子(渡辺真起子)の家に身を寄せている高校生のハル(モトーラ世理奈)。彼女は家族と一緒に岩手県大槌町に住んでいたが、津波が家族を奪っていった。ある日、ハルが学校から帰ると、部屋で広子が倒れていた。病院に運ばれ、静かに眠る広子の胸に抱きついたハルは、病院を出て行き、誰もいない土地で、亡き家族への思いを泣き叫ぶ。泣き疲れてその場に倒れていると、軽トラックを運転する公平(三浦友和)が通りかかる。公平は母と暮らす家にハルを連れて行き、広島で起きた様々な出来事について聞かせる。ハルは駅まで公平に送ってもらうと、意を決して自宅とは反対方向の電車に飛び乗る。着いた先でヒッチハイクをし、優しい姉弟に乗せてもらったハルは、妊娠中の姉・友香(山本未来)に、元気に動くお腹を触らせてもらう。夜の街で不良に絡まれ、危ないに目に遭いそうになると、福島県から来ていた森尾(西島秀俊)に助けられる。森尾は、被災地にボランティアで来たクルド人の男性を探して旅をしていた。しかし、クルド人男性は入館管理局に拘束されていた。森尾はかつて原子力発電所で働いていて、ハル同様、家族を津波で失った。森尾の実家に行くと、今田(西田敏行)と姉(池津祥子)が二人を出迎える。ハルは、森尾の車で大槌町に着く。地図を見なくてもわかる自宅は、土台だけが残されていた。ハルの心に虚しさが広がる。大槌町には、電話線はつながっていないけれど、亡くなった人に想いを届けることができる“風の電話”という電話ボックスがあるらしい。ハルは導かれるように、旅の執着地に向かう……。