かつてロックスターとして一世を風靡した男(中村耕一)は、ある事件がきっかけで音楽を封印し、ビルの清掃会社で働きながら慎ましく暮らしている。仕事場とアパートを往復する生活で、生きる意味を問うことすらしない日々。男の同僚で、かつて男のファンだった寺田(山口智充)だけが心を許せる相手だった。男の隣人は会社の同僚の女(遥海)で、夜な夜な母親(高岡早紀)との激しいやり取りが男の部屋に響き渡ってくる。ある日、公園でひとり口ずさむ女の歌声を聴いた男は、大きく心を揺さぶられる。女の才能を確信した彼は、昔の同僚である音楽プロデューサーの矢吹(竹中直人)に、女の歌を聴くよう頼み込む。矢吹には断られるが、それでも通い詰めるうち、女の可能性を信じたアシスタントの望月(岡崎紗絵)の手助けもあり、女は次第にチャンスを掴んでいく。そして男もまた、自分の歌が他人の心に灯をともすことに気づかされる。