グイド(M・マストロヤンニ)は四十三歳、一流の映画監督である。彼は医者のすすめに従って湯治場にやってきた。湯治場に来てもグイドは、愛人カルラ(S・ミーロ)、妻ルイザ(A・エーメ)そして職業の上での知人たちとの関係の網の目から逃れることはできない。カルラは美しい女性だが、肉体的な愛情だけで結ばれている存在で、今のグイドにとっては、わずらわしくさえ感じられる。妻ルイザとの関係はいわば惰性で、別居することを考えはするものの、実行する勇気がないだけでなく、時には必要とさえ感じるのである。そんなグイドの心をよぎるのは若く美しい女性クラウディア(C・カルディナーレ)だ。クラウディアは、グイドの願望の象徴である。しかし彼女との情事の夢もむなしく消えてしまう。彼の夢、彼の想像の中で、思索は今はなき両親の上に移る。そして次々と古い思い出をたどる--ブドウ酒風呂を恐れ逃げまわる少年グイド、乞食女と踊ったことで神父から罰せられる神学校の生徒時代のグイド。やがて保養を終えたグイドは混乱と失意のまま、もとの生活にもどる。彼がすべてのことを投げ出そうとした瞬間、彼の心の中で何かが動き出した。彼の渦去のすべての対人関係、逃れようのない絶対の人生経験をかたち作っているすべての人が、笑顔をもって彼と同じ目的地に向っていこうとしているのである。映画製作が始まった。オープン・セットでグイドは叫ぶ。「みんな輪になってくれ、手をつないで踊るんだ!」演出していた映画監督グイドは、自分も妻とともに輪の中に入る。踊り続ける人々はやがて闇の中に消えた。ただ一人残り、一心に笛を吹き続けるのは、少年時代のグイドだ。