鞍馬天狗の夢からさめた寅さんは、妙に生まれ故郷の柴又が恋しくなり、小さな鯉のぼりを買って勇んで帰って来た。この鯉のぼりは、最愛の妹・さくら夫婦の一人息子満男のためのものだった。ところが、さくら夫婦が、やはり満男のためにと大きな鯉のぼりを買ったばかり。博は寅の心情を知り、庭先の鯉のぼりをいそいでおろすが、このことを知った寅さん、「みずくさい」と一言いって怒る。おまけにとらやでは最近、拾ってきた犬に「トラ」と名づけていたから大変。寅さんは自分が呼び捨てられているものと勘違い大喧嘩。例によって柴又を去っていった。四国は、愛媛県大洲市。この古い城下町にやって来た寅さんは、墓参りをしている美しい人に一目ぼれ。その夜、偶然にもその人と旅館がいっしょになって、親に大反対されながらも一緒になった夫が、数カ月前突然亡くなったという身の上話を聞き、しんみりとする。翌朝、寅さんは持前の気っぷの良さを発揮し、「何かあったら柴又のとらやを訪ねてくれ」といって別れた。その直後、ふとしたことから時代劇口調の変な老人と寅さんは知り会い、妙に二人は馬が合った。実はこの変な老人とは、大洲藩十八代目当主・藤堂宗清であり、その夜宗清のお屋敷に連れていかれた寅さんは、そこで、急死した息子の話を聞かされ、その息子の嫁・鞠子に二人の結婚のことを反対したことをあやまりたいという宗清の気持ちに打たれるのであった。そして、持ち前の義侠心を発揮した寅は東京で鞠子を見つけ出すことを約束して大洲を去った。それから10日後、待ちきれなくなった宗清は柴又に寅を訪ねて来た。丁度タイミング良く寅も旅から帰って来たのだが、驚いたのはとらやの連中で、何しろ、この広い東京の中から一人の娘を捜し出さなければならないのだ。しかも、宗清は鞠子と会えるまで、長男の家に滞在することになったからたいへん。そんなある日、寅さんが、大洲で会った美しい女がとらやを訪ねてきた。そこで皆で食卓を囲んで話していると、以外にも宗清の探している女とはこの鞠子であることがわかった。その晩、宗清は鞠子のアパートで、亡き息子の思い出話に花をさかせるのであった。大洲に帰った宗清から寅さんに、鞠子と三人で大洲で暮そうという手紙が来た。寅さんは小踊りするが、鞠子から新しい相手と近々結婚することになっていると聞き、またまた失恋、旅に出た。それからしばらくたった夏のある日、寅さんは、大洲のお屋敷で、柴又の人情と笑いをふりまいていた。それは、長い長い寅の旅の一つの休憩時間でもあるかのようだった。