大阪本天満町の油屋、豊島屋の女房・お吉が惨殺された。油と血のりが混じりあった惨状をきわめる現場には“河内屋”の銘の入った油樽がころがっていた。河内屋は、豊島屋がのれん分けしてもらった油屋で、かつてお吉はそこへ奉公し、次男の与兵衛の乳母がわりもしていた。だが、与兵衛が4歳の時に河内屋の主人は他界し、番頭だった徳兵衛が義父となったことから与兵衛はグレ出し、お吉は彼の遊びの尻ぬぐいをしてやっていた。そんなある日、お吉は与兵衛が油屋の元締、小倉屋の一人娘・小菊と密会を重ねていることを知る。2人の関係が表ざたになると河内屋の看板が取りあげられかねない。お吉に意見され神妙にうなづいた与兵衛だったが、小菊との関係は続き、ついに番所の手が入り2人は役人に捕らえられてしまう。小倉屋の主人・市兵衛の顔利きで2人はおとがめなしで放免となったが、市兵衛は2人が別れなければ河内屋を油屋の株仲間から外すと宣言した。しかし与兵衛の反抗心はさらに増し、激しく打ち据える徳兵衛に与兵衛は小菊と別れないとうそぶき、心配して訪ねたお吉に心中の用意もあると、匕首をちらつかせてみせた。数日後、軟禁されていた小菊を連れ出した与兵衛だったが、かけおちという状況は小菊を異常なまでに興奮させ、尋常を逸した小菊に驚いた与兵衛は、お吉に助けを求めた。小菊を小倉屋の手代に渡した後、お吉は与兵衛に女の魔性について語ってきかせる。さらに数日後、小菊の結婚が決まり、お吉は花嫁の介添え役を頼まれた。小菊が嫁ぎ、与兵衛はやっと油しぼりの仕事をはじめるようになったが、小菊は仕事場から与兵衛を誘い出し、まだ密会を重ねていた。それを知ったお吉は小菊に会っていましめたが小菊は聞き入れず、その高慢な態度にお吉の女の意地と嫉妬心が燃え上がっていた。小菊に与兵衛をもてあそばれるぐらいならと、お吉はついに自ら身体を投げ出し与兵衛と激しく燃え上がるが、それはお吉を無惨な孔へと追いやる地獄の迎え火となり、やがてお吉は与兵衛に刺殺されてしまうのだった。