1998年、今は廃墟と化した瀬戸内海を臨む浜辺の艇庫。10年前まで、伊予東高校ボート部の部室として使われていたそこに、5人の少女たちの写真が飾られていた──。1976年、春。東校に入学した篠村悦子こと悦ネエは、以前から憧れていたボート部に入部を希望するが、東校には女子ボート部がなかった。そこで強情な性格の彼女は、ないのなら作ればいいと先生に直訴。自ら女子ボート部を創設してしまう。ナックル・フォアという5人競技が女子の主流であると聞いた悦ネエは、新人戦のある10月までという条件でヒメ、リー、ダッコ、イモッチの4人のメンバーを集める。ところが、誰ひとりとしてボートの経験者のいない彼女たちは、ボートを海へ運ぶことすら一苦労。悦ネエの幼い頃からの天敵で男子ボート部の関野ことブーにバカにされながら、練習を開始するのであった。暫くすると、現役を引退した3年生の安田がコーチについてくれた。そのお陰で、彼女たちのオールさばきも漸く様になっていく。夏合宿を経て、いよいよ新人戦。だが、東校女子ボート部の実力は勝利にはほど遠かった。約束の期間を終えた悦ネエは、ボート部に付き合ってくれたヒメたちに感謝の言葉を述べる。ところが、試合の敗北に苦渋を味わったヒメたちの気持ちは固まっていた…。シーズンも終わり陸トレに励む悦ネエたちに、顧問教官がコーチ・入江晶子を紹介した。元日本選手権メンバーであった晶子は、しかしその輝かしい経歴とは裏腹に全くやる気がない。悦ネエたちにトレーニング・メニューを渡すと、毎日ぼんやりしているばかりだ。ある日、貧血で倒れた悦ネエを心配したブーが、途中まで自転車に乗せて送ってくれた。ブーの意外な優しさに心揺れる悦ネエ。だが翌日、借りた手袋を返そうと思った彼女は、ブーが新体操部の桃子と一緒にいるところを目撃して憤慨する。春休み、再びボートのシーズンがやってきた。新入部員もひとりだけであったが入部し、今や東校女子ボート部は自分たちだけでボートを海に出せるくらい逞しく成長していた。ところが好調に見えたのも束の間、悦ネエが腰を痛めて医者から安静を言い渡されてしまう。練習に参加出来なくなる悦ネエ。また、彼女を欠いたボート部も相変わらず試合ではドベばかりだ。そんなある日、温泉療養に出かけた悦ネエは、そこで晶子に会う。やる気のない晶子に、自分にはボートしかないと訴える悦ネエ。やがて彼女はボート部の練習に戻り、晶子も夏休みの合宿で本格的な特訓をしてくれるようになる。そして、二度目の新人戦。東校女子ボート部は、順調に決勝戦まで勝ち進んでいた。もうドベではないという気持ちが、彼女たちの士気を奮い立たせる。「ひがしこー、がんばっていきまっしょい!」ブーや晶子たちも懸命に応援してくれている。だが、彼女たちはわずかの差で負けてしまうのであった。こうして二度目のシーズンが終わった。艇庫の掃除を終えた悦ネエは、来年最後となるシーズンへ向けて自分にエールを送る。