売春禁止法が施行されようとしていた昭和33年。京都の花街の置屋・藤乃屋に、ひとりの仕込みおちょぼ(雑用係)・時子がいた。貧しい生家の家計を助ける為、幼い頃からひたすら奉公に励んでいた彼女は、いつの日か自分も舞妓として羽ばたくことを夢見ている。そんな時子を預かる藤乃屋の女将・里江は、その昔、藤千代という名でならした気丈な女だ。彼女は、奔放すぎる貞操観念から男問題で次々に騒ぎを起こす照蝶、君竜、染丸の3人の芸妓たちを抱えながら置屋を営む一方、自らも老舗の呉服問屋の主人でパトロンの吉川と長年に渡って関係を続けている。ところが、最近吉川との間にさざ波が立ち始めていた。どうやら月々20万という金を里江に貢いでいることが、本妻に知られてしまったらしい。そんなある日、吉川が藤乃屋に怒鳴り込んできた。照蝶が、婚約者と結納を交わしたばかりの息子・順一を誘惑したというのだ。怒りのあまり照蝶に手を上げる吉川に、里江は彼との訣別を覚悟する。ところが、それは吉川と順一が仕組んだ計画だったのである。婿養子である吉川は、金ばかりかかる里江との関係をここらで清算したかったのだ。それから暫くして、時子が舞妓になることが決まった。しかし、それには多額の費用がかかる。吉川というパトロンを失った里江は、かつて吉川と里江を争って負けた三上と一夜を共にすることを条件に、支度金を工面するのであった。料亭・花万の女将の口利きで、いよいよ時子の水揚げの相手も北山の大尽・田村に決まった。時子は、花万の女将から・おもちゃ・という名をもらい受けると、一人前の舞妓となる為、田村の元へ向かうのであった。