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購入 124,867 6
VOD 561,554 168
テレビ 925,511 107
その他 158,821 15
鑑賞日 2025/04/09  登録日 2025/04/13  評点 95点 

鑑賞方法 映画館/神奈川県/横須賀HUMAXシネマズ 
3D/字幕 -/字幕
いいね!レビューランキング -位

たまりません

うーん、意外と世評が高くないんですね。
私的には今年のベスト10入り確実な傑作と思ったのですが。

やっぱりポン・ジュノ監督と言えば「パラサイト」「殺人の追憶」「グエムル」「母なる証明」といった力作・秀作ぞろいですから、韓国の、虐げられた人々の気持ちに寄り添いながら、しかし、そのみじめさや反逆精神を、一風変わった切り口で深掘りして、しかも物語的にはいつも観る者をびっくりするところまで連れて行ってくれる「語りの魔物」みたいなところがありますからね。
今回は、まるっきりかけ離れた未来の異星の物語ですから、やっぱり少し違和感を感じさせたのかも知れません。

でも、初手から、主人公が「徹底的に人生につまずいて、徹底的にどん底に追いやられ、そして最後の頼みの綱のような仕事の中で、徹底的に搾取され、いわば生ける屍になっている」ということがすぐわかるし、それを他人事のように笑って眺めているうちに、あ、これは自分のことだ、と分かっていく仕組みになっていますから、過去作と同じく、韓国の、そしてアジアの、さらには世界中の、「搾取される側の人たち」のことを描いているのだなと分かってきます。

比喩的にわかるから傑作と言うことではなく、それをもっとも現実から遠い形で描きつつ、その「遠さ」と「変さ」をファンタスティックに面白がらせる、というSFというものが持っている文学性をきっちりと形にしているなと思いました。
なによりも「人間複製プリンター」という、大胆かつ神をも恐れぬという言い方がこれほど当てはまるような、バチ当たりな危機を、しかもいかにも、プリントされる人間をバカにした形でつくりあげてみせた創作者たちの、底意地の悪さと、映画屋魂にまずやられました。
のみならず、食べ物や、衣類や、部屋の形状や、なによりも死者を○○するあの装置の非人道性などに、圧倒的な格差社会を描き出し、恐らくは「人の命」というものがどんどん軽くなって行くであろう近未来を予感させて、慄然とさせます。
しかも、そういった「重たい現実と未来への絶望」というテーマを、明らかにみんな(主人公たちも含めて、一番カッコいいヒーローたちがみんなそれぞれに狂ってるという造形)どこかイカれてる者たちによる、ある種のスラップスティックコメディとして創り上げたポン・ジュノ監督。さすがと言わざるを得ません。
あの妙な生物は明らかに○○○だよなあ、と出てきた途端に思ってしまうので、それだけはもう少し帰る余地はあったのかなと思いますが、137分という長尺なのに、あっという間に観てしまいました。

筒井康隆ファンは、絶対に観るべき作品ですね。
世界への疑念と、システムの非情さ、なけなしの反逆心と、心中モヤモヤのたうち回りながら、それでいてドライな人間観、矢継ぎ早に繰り出される黒い笑い。たまりません。